19 正義の味方2(竜堂視点)

「はあ、はあ……」


 幸い、脇腹を浅く裂かれただけだ。

 なんとか体をひねって、貫かれるのを避けられた。


 とっさのことでセリューエルに盾になってもらうこともできなかった。


『大丈夫か、竜堂』


 セリューエルが無機質な声でたずねる。


「あ、あんまり大丈夫じゃ……ないな」


 竜堂は痛みに顔をしかめた。


「いきなり何をする――」


 と、彼らをにらんだ。


 三人は目の焦点がおかしい。

 あらぬ方向を見つめながら、三方向から竜堂に近づいてくる。


 残りの二人もナイフを抜いた。


「君たちは――」


 俺を殺すつもりか!?


 単に因縁をつけられているとか、そういう雰囲気ではなかった。

 明確な殺意だ。

 しかも、それはおそらく彼らの意志ではなく――。


「……東雲が操っている、のか」


 だとすれば、彼には『爆破』以外に『他人をコントロールする』能力もあるのだろうか。

 通常、『超存在』から授けられる能力は一つのはず。


 東雲が例外なのか。

 それとも――。


「いや、考えるのは後でいい。まずこいつらをどうにかしないと……」

『私の力で排除するか?』


 セリューエルのパワーやスピードは並の人間の数倍はある。

 格闘戦なら、相手が三人でもまず負けないだろう。


 だが――。


「いや、無関係な人間を傷つけたくない。ここは退却だ」


 竜堂は踵を返して逃げ出した。

 セリューエルも無言でついていく。


「作戦を立て直す」


『爆破』とは全く違う、こんな能力があるとは予想外だった。

 と、


「う、うわぁぁぁぁっ……」


 悲鳴が聞こえてきた。


 こんなときに……と思ったものの、見過ごすことはできない。

 明らかに誰かが襲われていると思われる悲鳴だったからだ。


 竜堂は周囲を見回し、東雲からの攻撃が来ないことを確認してから飛び出す。


「――あれか」


 先ほどのヤンキーがサラリーマンらしき通行人を襲っている。


「ちっ、無差別に人を襲わせるなんて!」


 竜堂は舌打ちした。



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