23 最終局面2(竜堂視点)
どこだ、どこにいる――?
竜堂は必死で東雲の姿を探した。
さっきまでの、声が聞こえてくる感じからして十メートルほどしか離れていないだろう。
なぜわざわざそんな距離まで近づいてきたのか。
それは――。
「俺に力を使わせるため……か?」
こうやって能力を乱射し、殺人犯は竜堂だと誰の目にも分からせるため……?
いくら超常の力を使ったとはいえ、状況から見て、竜堂は確実に疑われるだろう。
下手をすれば、東雲が起こした学内での殺人まで竜堂の犯行だとみなされる可能性すらある。
いや、あるいはその辺りまで東雲の狙いに入っているのか?
「くそ、俺は正義の味方だぞ……」
周囲は、おびえたように彼を見ている。
薄汚いものを見るかのように。
おぞましいものを見るかのように。
「違う、俺は悪くない! 俺に罪はないんだ! そんな目で見るなよ! 見るなっ! いいか、本当の犯人は――」
早口でまくしたてていると、その途中で、
ぼんっ……!
頭のどこかでそんな音が聞こえた。
「あ……」
視界が真っ赤に染まっていく。
頭の中が燃えるように熱い。
自分が致命的な一撃を受けたのだと悟る。
馬鹿な。
俺は人間を超越した存在なんだ。
正義を執行する尊い存在なんだ。
こんなところで死んでいいはずがない。
馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な。
驚きと愕然とした気持ちが頭の中で渦を巻く。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない……。
思考が混乱し、どこまでも加速する。
――そして。
彼の意識は急速に遠のき、やがて霧散した。
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