22 最終局面1(竜堂視点)

「ん、あれは……」


 ヤンキーたちの死体のそばに、頭部を吹き飛ばされたセリューエルが倒れている。

 東雲の言葉通り、死んでいるようだ。


「いや、待てよ――」


 ふと気づいた。


 もしかしたら、もう一度念じれば、再度幻想体を呼び出せるかもしれない。


 今までセリューエルが『殺される』という事態になったことがないため、試したことはない。

 基本的に幻想体は必要に応じて具現化させ、必要がなくなれば、その具現化を解くだけだった。


『殺された』状態の幻想体をふたたび具現化することはできるのだろうか?

 それとも一度『殺され』れば、二度と呼び出せないのか。


「試してみるか……」


 幻想体召喚のために精神を集中させようとした、そのときだった。


「うわ、ひどいな。大量虐殺じゃないか」


 突然、声が響く。


 ――いた。


 背後に、人の気配がする――。


「こ、このぉっ!」


 竜堂は振り返りざま、能力を発動した。


 標的を目で見てからでは、発動のタイムラグの分、相手の方が速いかもしれない。

 だから、相手が誰であれ殺すつもりで、一息に能力を発動した。


 ずんっ!


 胸元を貫かれ、そいつは吹っ飛んだ。


「えっ……!?」


 東雲ではない。

 無関係の通行人だ。


「あ、ああああ……」


 竜堂はうめいた。


 また、殺してしまった。


 自分は正義の味方なのに。

 悪人でも何でもない、ただの通行人を――。


「俺のことをとやかく言えないな、お前」


 東雲の笑い声が聞こえる。


 が、姿は見えない。

 おそらく物陰に隠れて、こちらを覗き見ているのだろう。


「お前も立派な無差別殺人犯だ」

「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁっ! お前が! お前が! お前のせいだろうがぁぁぁぁぁっ!」


 竜堂は怒りの声を上げた。


「俺は殺したくなんてなかったんだ! お前だけを殺そうと思ったのに! くっそぉぉぉぉぉっ!」


 周囲に【穿孔】を乱射する。

 路面が、当たりの壁や、家や、店が――次々に穴が空いた。


「な、なんだ……?」


 大騒ぎになり、あっという間に大勢の人たちが出てくる。


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」


 悲鳴が上がった。

 竜堂が殺したヤンキーたちや通行人の死体を目にしたからだろう。


 そして、返り血を浴びながら壮絶な表情を浮かべる竜堂自身を。


「し、しまった……」


 これだけ大勢の人間に見られたら、もう言い逃れはできない。


 どこにも、逃げられない。

 殺人犯として逮捕されるのだろうか。


「安心しろ、逮捕される前にお前は死ぬ」


 まるで竜堂の心を読んだかのように、声が響く。

 東雲だ……!



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