16 結界空間2

「――誰だ、お前」

「情報は与えないわ。あなたがどんな能力を持っているか、分からないもの」


 彼女の声が響く。


 俺は緊張感を高めていた。


 奴は、どうやって仕掛けてくる――?

 俺の『殺人チート』は非常に強力な攻撃手段だが、防御にはまったく向いていない。


 というか、防御能力自体を有していない。

 姿が見えない敵に対しては無力だ。


『悪魔A、いるか?』

『もちろんだ』


 すぐ側で悪魔Aの声が聞こえた。


 姿を消しているらしく、俺の目にも悪魔Aの姿は見えない。

 今は、その方が好都合だ。


『悪魔BとCは?』

『同じくここに。Cは離れた場所にいるから結界内に取り込まれていないようだ』


 Bの声も聞こえた。


 俺の護衛を担当するBはともかく、能力者の調査に出向いているCはやはりここには来られないか。


『Bは俺の傍から離れず、護衛をしてくれ。もし敵からの攻撃を感知したら俺に危害が及ばないよう迎撃。いいな?』

『承知』

『Aは敵の探知だ。探せるか?』

『やってみよう――』


 ばさり、と翼の音が聞こえた。


 姿を消したまま、周辺を探しているんだろう。


「さっきから何をぶつぶつと言っているの?」


 また声がした。


 どうやら悪魔の姿が相手には見えていないらしいな。

 こいつは好都合だ。

 と、


『【迷彩破壊】』


 悪魔Aが呪文らしきものを唱えた。


 すると――。


 ばりばりっ。


「きゃっ……!?」


 前方の空間に稲妻が走り、そこに一人の女の姿が浮かび上がる。

 眼鏡に黒髪ショートヘア、黒いスーツ姿のいかにもキャリアウーマンといった雰囲気の女だ。


 年齢は二十代後半くらいだろうか、理知的な印象の美人だった。


「そいつを捕らえろ!」

『承知』


 悪魔Aが飛び掛かり、女を羽交い絞めにした。


「くっ……」

「よくやった、悪魔A」


 俺は悪魔Aに言うと、女に視線を向け直した。


「お前がこの空間を作り、俺を狙ってきた――ってことでいいんだな?」


 女は答えない。


「返答がなかったり、虚偽の答えを言った場合は相応の目に合わせる。いいな?」


 俺は彼女をにらんだ。

 その意を汲んだのか、悪魔Aが女の腕をひねり上げる。


「あ……ぁぁぁっ……!」

「痛いか? なら、正確に返答するんだ。いいな?」

「わ……分かったわ」


 彼女は観念したようにうなずいた。





***

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