第6話 雨中遠征

 やあ、おいらです。


 不覚にも風邪をひいたようです。鼻水が出て、若干、熱があるようなないような。体温計で熱を測って、とんでもない高温だったら、それだけでダウンしてしまうので、怖くて測っていません。

 体温計といえば、以前の雑居房で、同居人の飼っているねこが、おいらの体温計をイタズラしてどっかにやちゃったんです。で、今回の独居房への移送で、当然、すべての荷物を房から撤去するのだから、おいらの体温計も発見されるだろうとたかをくくっていたわけです。しかし、なんということでしょう。体温計は見つかりませんでした。「母さん。おいらの体温計はどこに行ったんでしょう?」とつぶやきたくなります。おいらは同居人に弁償を求めていますが、一向に弁済されません。ひじょうに腹立たしい。しかし、おいらは、強行な手段に出ることができません。なぜなら、この雑居房の同居人は独居房の看守なのです。どうしてこういうことになったのかは、説明が面倒なので書きません。


 上記の駄文、理解できました? 相変わらず、下手くそで、つまらなくて、興ざめで、意味不明で申し訳ございません。なにせ、おいらの存在自体がこの世の意味不明なんですから。しょうがねえな。


 まあ、関東は今日、いや、正確には昨日か。雨だったんですが、看守が「アピタ長津田店に行く!」と命令をおいらに下し。更生の一環として、アピタ長津田店見学をすることになりました。おいらは、てっきりバスで十日市場から霧ケ谷バス停まで行くと思っていたのですが、鬼看守は「歩く!」と無茶なことを言いました。三月に病気して、四月をお布団の中で過ごしたおいらの体力はスライムのヒットポイントくらいしかありません。なのに、鬼看守ときたら、スタスタと歩き出します。おいらはついて行くのがやっとです。やたらと喉が乾きましたが、看守は水ひとつ買ってはくれません。三十分くらいかかって、ようやくアピタ長津田店に到着しました。


 広い店内に入って、まずは昼食をということになりました。看守は豪勢に「いきな○ステーキで食べよう」と言いました。おいらはワイルドステーキ450gを注文しました。さあ、どんなもんか? 期待に胸躍らせて、一口目をほおばりました。「固い……」おいらは冷や汗を流しました。おいらは上の歯の大部分が義歯なので、固いものは咀嚼できません。仕方がないので、あんまり噛まずに飲み込みました。すると、やばいことに、肉が喉に詰まりました。呼吸ができません。このままだと死にます。そういえば、入り口に肉を喉に詰まらせた時の注意書きがあったなあ。薄れゆく意識の中でおいらは恐怖感にとらわれました。

 幸い、咳を数回して、水を飲んだら、肉は胃の腑に落ちていきました。そのあとは肉を細かく切り刻んで食べました。それでも固い! おいらは誓いました。いきな○ステーキには二度と行かないと。


 でもって、そのあとは看守に引き連れられて、ビバホームにいきました。そこで、おいらは組み立て式の小さくて素敵なラックを見つけ、看守におねだりして買ってもらいました。未読の文庫本を置こうと思います。でもね、おいら工作苦手なの。作れるかな?


 ビバホームからアピタ長津田店に戻る途中、ベビーカーに乗った赤ちゃんと目が合いました。おいらは「泣かれるかな」と思いながら、変顔をしました。なにせ、髭面、髪の毛ぼうぼうのおっさんです。恐怖を与えて当然でしょう。ところが! 赤ちゃん、大爆笑。天使の笑顔です。おいらは超嬉しくなりました。赤ちゃんのお母さんは苦笑いでした。そうだよな。おいらシリアルキラーだもんな。


 ああ、読書ですか? 今ね、東直己さんの『畝原シリーズ』を読んでます。まだ読み終わっていないので、終わったら一言レビューなんかしようかな。


 明日は精神病院です。風邪、悪化しないかな? 往復歩いたので全身、筋肉痛です。運動不足は否めない。では。

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