第94話 右往左往

 やあ、おいらです。


 おいらが暴走を始めてしまったので、誰もついてこれないみたいですね。えっ? そうではなくて「もう、ついて行けねえ」という気持ちなの……そうか。


 でもね、ハードボイルドなジェットコースタームービーって最後は主人公、暴走するのお決まりじゃない? そう、それなんだよ!

 実はおいら、最終回のオチまで決めちゃっていてさあ、もう残りの回なんて、はっきり言っちゃえば埋め草さ。いえいえ、もちろん全力で取り組みますよ。力みなぎる躁状態。がっくりお布団鬱状態。いまのおいらは混合状態。


 さて、今回はおいらのアレルギーについて真剣に語ろうと思うのですが、脳内でシミュレーションしたところ、途中から全く関係のない話になる可能性があると発覚しました。なのでタイトルも、右往左往です。よく残っていたなあ、こんなありがちな四字熟語。いや、待てよ。この作品以外の駄文では使っているかもしれないなあ? まあ、いいや。


 では、とりあえず主題であるアレルギーから。おいら、幸せなことに、現在、とても深刻な問題であり、死に直結する危険なアレルギー、食物アレルギーはないのですよ。昔、職場の休憩室で、コンビニのそばを手繰っていたら、庶務のおばちゃんに「あんた、そばなんて食べて平気なの?」と心配されました。おいら、そばが大好き。できたら、元妻の両親の故郷である、山形にそば旅行に行きたいな。でも保護費受給者だからねえ。ムリかな? 寒ざらしそばってのが、春限定であってさあ、あれ? 味を忘れてしまいました。おいら田舎そば系より細身のそばが好き。だから、センター北の“あいたい”というショッピングビルの三階にある“ゆかりな”というそば屋が好きっていうのは何回も言っちゃってるね。でも、いつ行っても暇そう。マジ心配。


 話を戻します。おいら最大のアレルギーは恥ずかしながら、アトピー性皮膚炎なのですが、もともと、アトピーという言葉は、意味不明とか原因不明っていうことだったとテレビで観たような観なかったような。おいら医師免許、剥奪されているから知らねえ。

 でも、今はアレルギーの一種として考えられているみたいですね。アレルギーのマーチっていう、コアラのマーチみたいな一見、可愛らしい言葉があるじゃないですか? おい、笑ったやつ、表に出ろ! アレルギーのマーチは小さい子供や親御さんにとって、とても辛いものなんだからね。謝りなさい。うん、それでよろしい。アレルギーのマーチというのは例えば喘息持ちの子が治療で喘息が回復すると、それに取って代わるようにアトピーが出るという、肉体的にも精神的にも本人、親御さんにダメージを与えるものです。昔は大人になったら治るよと言われ、実際にそういうケースも多かったのですが、今は大人になっても重篤化するケースも多い。


 おいらの場合は高校生の時、ちょうどチェルノブイリの原発が爆発してすぐに、体育の授業で校庭のトラックを走らされていた時に、雨が降っていたんです。「やばいよ。黒い雨だ」とおいらは訴えましたが、バカな体育教師はランニングを続行しました。その夜、突然、左肘の裏が猛烈に痒くなり、皮膚が真っ赤になりました。これはマジの話なのです。だから放射能アレルギーじゃないのって、今も少し思っています。でね、翌日、皮膚科に行ったら「アトピーですね」と言われて、やたらと赤い薬を処方されました。嫌な匂いだし、洋服に色はつくし、とっても嫌でした。最初は左腕だけでしたが、いつしか右腕の肘裏も赤くなりました。でも、そんなに悩まなかったな。所詮、腕だけだもん。その後、大学に行ったらちょっと顔に赤いものができ、乾燥してフケみたいのが落ちて不愉快でしたが、大学図書館の夜の学生職員になって、毎日、学食の体に悪そうなものを夕飯に食べていたら、なぜか、治っちゃった。


 次にピンチが訪れたのはバカ書店の旧たまプラーザにいた時、日に日に顔面が腐っていくような感じになりました。さらに悪いことに、バイトのおばちゃんが「マー油がいいよ」っていうから信じて顔に塗ったら、どうも、おいらには合わなかったらしくて、顔面崩壊、ウミまで出て来ちゃった。汁も出てる。最悪さあ。ちょうどその時PHP研究所の『こどもが育つ魔法の言葉』という単行本をおいらが、たくさん売ったからって、P研の人が取材に来たんだけど、おいら、ゾンビみたいな顔だし、「どうしてこの本を多面展開したのですか?」って聞かれて、「店長に言われたから」と真っ正直に答えたの。それが、P研の社内誌に載ったのかはわかりません。で、もうどうしようもなくなったおいらは、その日が日曜だったので、休日営業をしている皮膚科を探して、青葉台に一軒見つけました。どうも、正直、やる気のなさそうな先生でしたが、ステロイドって恐ろしいです。あんなにただれていた顔面が、数時間で治っちゃった。すげーよ。もちろん副作用もあるだろうけど、苦しさからすぐに解放してくれるんだから、気をつけて使用すればいい薬なのではないでしょうか。もちろん、薬って元々は毒ですからね、手前勝手な使い方をしたら、まあ、かつておいらがデパス中毒になったように悲惨な結果を招くのは当たり前のことです。


 その後、人生においてもう一回だけ顔面崩壊したのですが、その時もステロイドで瞬時に、いい男に戻ったのさ。でもね、その皮膚科。鴨居の鴨皮膚科(仮名)、最悪の病院でさあ、院長はムスッとして恐ろしい。では娘の方がいいかと思ったら、すんげー高飛車でさあ、まだ院長の方がマシなの。二人とも、慶応医学部だからって、お高くとまってんだよ。バーカ! もっとお高くとまってるのが、なぜか受付の女なの。だって、年老いたおばあちゃんが、一万円札を出したら、「細かいお金はないの?」だってさ。おいらだって、両替にも金がかかるって知っているよ。でも、病院だって、接客業、サービス業でしょ? ホスピタリティーって知らないのかよ。しかも相手は老人ですよ。絶対お前は天国行けない。そういうわけで、そこの皮膚科は逃げました。で、今回の皮膚科。最初は先生苦手だったけど、慣れて来たわ。看護士さんたちもまっとうですから、できれば通い続けたいなと思います。


 ただ、バカ皮膚科以外に、血液検査をしてくれた病院はありません。バカでの結果はダントツで、動物の皮膚。つまりイヌネコでさあ。ついで、ハウスダスト。スギ花粉はちょびっと。春においらはマスクしません。


 えっ? イヌネコ?


 今回おいらのアトピーが悪化したのって、アビが死んでからですよ。もしかして、これはアビの呪い? 


 思うのですが、おいらのアトピーはアレルギーというより、精神的ストレスなのではないかとねえ。考えているところです。


 あれ? きっちりアトピーの話をできましたね。脳内シミュレーションでは床屋の話に変わるはずだったんですが。


 最後に、本当のおいらのアレルギーのことを。おいら、実は喘息持ちでして、これはねえ、はっきりとアビのせいだと言い切れます。結婚時代に、元妻が、片目を失ったのらねこアビをマンションに連れて来たわけです。最初の頃はおいらに懐いて可愛かったなあ。でも、日に日においら呼吸ができなくなっていくのです。それで、一度、元妻に「救急車を呼んで」と頼んだんですが、「様子を見よう」ってスルーされました。翌日、仕事に行くためマンションを出たのですが、息が切れて、歩けないの。しかも、マンションから駅まで徒歩三十分かかるのです。失神しそうだわ、失禁しそうだわとたいへん。なんとか、市営地下鉄、東海道線に乗車したんですけど、心中で「会社に行ったら、すぐに早退して病院に行こう」と思ったのですが、なんということでしょう。クソの店長が「インフルエンザで三人休んでるから、よろしく」だってさ。おいら、一日中立ってさ、レジで接客よ。休憩時間には『小青竜湯』という、喘息に効くという漢方薬(同じく喘息持ちの元妻にもらった)をがぶ飲みしましたよ。やさしい庶務のおねえさんが「ペコリさん、顔が白いよ」って言ってくれたけれど、あとは気づいてさえくれないのよ。それが戸塚店だってーの! それで、よろよろしながら閉店時間になったんですけど、なんか、その時に日本経済出版社から経済小説を出したっていう、近所のジジイが拡販してくれと言って、ダンボールにぎっちり詰まった本を持って来たんですよ。その重い箱を誰が、商品管理課に持って行くのでしょう? 売り場にいるオスはおいらだけ。ええ、持って行きましたよ。それで、とどめを刺されました。完全に呼吸不全。JRの戸塚駅まではいけましたが、ベンチからは立ち上がれませんでした。そうしたら、その当時、バカ書店の藤沢の店にいた元妻が救出にきてくれました。あれ? その当時おいらは携帯電話を持っていなかったよ。どうやって、連絡とったのでしょう? とにかく、彼女に持たれかかってようやく電車に乗り、桜木町にある夜間緊急救急病院に行きました。まあ、レントゲンとかとりましたけど、結局はもちろん喘息ですよ。吸入と点滴で応急処置してもらいました。そして午前二時、その頃は自動車に乗っていた、アクティブな元妻が病院まで迎えにきてくれました。でも、喘息は服薬しても、アトピーみたいにすぐに回復しません。会社復帰まで一週間を要し、ただでさえ信頼されてないクソ店長の評価をさらに下げることになったのです。

 もっとムカつくのは、マンションのごく近いところにあったクリニックの院長がですねえ、とんでもない馬鹿でして、血液検査をしたのはいいですが、結果を聞きに行ったら、「脂肪が多いねえ」とか喘息と関係ないこと言うの。だから「おいらの喘息の原因は?」って尋ねたら「いやあ、喘息の検査ってお金かかるから」と言ったのです。その時、馬鹿院長のこと殺してもよかったですよね。

 なので、おいらはマンションから、一時間もかかる病院まで、通うことになったの。大した病院じゃないけど、馬鹿院長のところよりマシだ。でも、最終的に、パニック発作の時にこの病院で、デパスを処方されて、地獄への第一歩を歩むことになったんだよね。


 ああ、いい病院ってどうしてないの? 医科大学は何を教え、医学生は何を学んでいるのさ! ああいった問題を起こす体質だからさあ、まともな医師、開業医がいないんだよ。根本から改革しなくちゃ。まずは患者の気持ちを第一に考える。それだけでいいんだよ。

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