第10話 無気力也
やあ、おいらです。
西城秀樹さんが、亡くなられましたね。六十三歳かあ。二回も脳梗塞になっちゃったのですね。横浜市内の病院で息を引き取られたのか。そういえば、はるか昔、たまプラーザの書店で働いてた時、近くに美味しい焼肉屋があって、そこの常連に西城秀樹さんがいたんだよな。近くに住んでいたんでしょうね。その関係でLUNA SEAのボーカルの……なんだっけ? ああ、河村隆一とか。早くに死んじゃった、プロレスラーの……なんだっけ? 今度は本当に思い出せないや。検索します。少々お待ちください。出ました。“破壊王”橋本真也さんなんかもきていたようですが、あいにくというか、幸いにというか、お会いしたことはございませんでした。たまプラーザというところは、土地柄が、あくまでも個人的な感想ですが、悪くてですね。ちょっと小金を持って、自分をセレブと勘違いした、お高くとまった下衆どもがたくさん住んでおりまして、おいらは転勤した当初、その雰囲気に馴染めなくてねえ。さらに、今までの店では、なんとなくお姐様方にちやほやされていたのに、史上最悪の性悪女(と、当時は思っていた。今は思っていませんよ)にネチネチといじめられて、斎藤茂太先生の鬱病の本を他の書店で購入するくらい、精神的に追い込まれておりました。あの一年は本当に地獄でした。
ああ、話が逸れてしまいました。念のため言っておきますが、西城さんは悪い人ではありませんよ。だって、会ったことないもん。わからんわ。
でね、たまプラーザ。芸能人、著名人も多いのよ。例えば、紺野美沙子さんとかご贔屓にしていただいていました。あとは、元ベイスターズの駒田さんとか、平田満さんとか。平田さんはとっても優しくていい方だと、誰かが言っていました。羽場裕一さんなんかもきていたな。おいらが接客したのは村上龍さん。地味だから全然気がつかなくて、あとでクレジットのサインを確認したら、村上龍って書いてあんの。びっくりしたなあ、もう。
大抵、有名人はいい人なんですけどね、今だに頭にきているのが、時代劇なんかによく出ていて、そのくせデビュー作は空飛ぶ仮面ライダーだった、俳優のM。実名出したいくらいキライ。当時、たまプラーザの東急は駐車券、お買い上げ二千円以上で二時間分差し上げていたんですけど、Mは五百円の雑誌買って、駐車券くれという。セコい、セコすぎる。おいら、やんわり説明すると「ああ、そうなんだ。わかった、じゃあ駐車券ちょうだい」って、すんごい押しの強さで詰め寄る。小心のおいらは思わず渡してしまいました。その事件が、とても深い心の傷となって、今も疼きます。それまで、おいらはMの出ていた『腕に覚えあり』なんて時代劇、大好きだったんですけど、以来、Mの出演するテレビ、映画は絶対に観ません。それに、Mの女房も、輪にかけてイヤなやつなんだ。テレビでてると、偉いのかよ! 平田満さんは偉いのに腰が低かったぞ!
今は、遠い記憶でした。
さてと、今日は暑いですな。おいらの独居房も室温二十八度。今季最高。でも、タオルケットと綿毛布を掛けて、横になるおいら。やる気ありません。
これではイカンと、出版社別に仕分けした文庫のうち、数が少ないものを著者別に並べることにしました。一番少ないのは、講談社学術文庫。一冊。『平将門』。これは気が狂っていた六年前に、大河ドラマの『風と雲と虹と』のDVDを買って「将門かっこええ」と思わず購入したものです。実際にかっこいいのは将門ではなく、加藤剛さんなんだけどね。まあ、買ってはみたものの、学術書だからおいら、チンプンカンプン。ブックオフに売りますわ。それから、前に酷評した『喫茶店タレーランの事件簿』も売ります。そうやって仕分けしていたら、あることに気がつきました。「あれ? ハルキ文庫の『畝原シリーズ』がない!」なんと、六年前のおいらは『畝原シリーズ』を「重苦しいから、もう読まない」と判断して売っちゃったのです。『イベリアシリーズ』に続く大失策。おいら、金に不自由しているから、リカバリーできません。涙が頬をつたいま……そこまではいかんか。
そんなこんなで、やる気が尽きて、大物の仕分けは明日以降に持ち越し。
そういえば、内科の看護師さん(とてもいい人)が「血液検査の結果が悪かったら木曜日に電話します」と言っていたけど、なかった。よかったよかった。
おいらは健康のため、ドクターペッパーを断って、無糖の炭酸水を飲むことにしました。なんか、体にいいらしいです。では。
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