第16話 晴読雨読
やあ、またおいらです。
前回を書き終えて、一応眠ったんですが、二時間ばかりで目覚めちゃった。なんか、もう眠くない感じ。どうせ、明日の昼間、寝ちまうんだから、もう、起きててもいいや。そんなわけで、連続投稿、スマソ。
もしかしたら、おいらのことを読書家だと思っている方がいるかもしれませんが、おいらは厳密にいうと、読書家ではありません。おいらの無駄に長い人生において、確かに狂ったように本を読んでいた時期が少なからずあります。しかし、全く本に触れなかった時期も結構あります。他に楽しいことがあったのです。
おいらの読書遍歴のスタートは生まれた環境に起因します。おいらの父親が元学研の編集者で、なんとかコースとかいう学習雑誌の編集長だか副編集長をやっていたのです。そのまま、学研に残っていてくれれば、ある程度の地位を得て、我が家はそれなりに潤ったはずなのに、父親はおいらが生まれた頃に「管理職になると編集の実務ができなくてつまらない」として、学研を退社。フリーの編集者になってしまいました。おいらは思うのです。「この人は家族の幸せよりも、自分のやりたい道を選んだんだ」だから、我が家は超貧乏でした。幼い頃、父親はほとんど毎日、家におりました。おいらはそれが当たり前のことだと思っていました。父親というものは毎日、会社に出勤して平日は家にいないものだとおいらが知ったのは随分と後のことでした。
そんな父ですが、まるっきり遊んでいたわけではなく、児童向けの書籍の執筆や編集をしていました。若い人は絶対知らないと思いますが、学研から『ジュニアチャンピオンコース』というシリーズ物が発行されておりまして、父親は三冊ほど著作を出しております。ネットで調べたら、二千円の価値が付いていました。父親はそのほかにも、児童向けの著作を多数執筆しており、変な話ですがWikipediaにも名前が記されています。そういう意味では尊敬できる父親であります。
しかし、その性格は奇矯でして、普段は温厚なんですが、突然、爆発するのです。おいらはあまり、被害を受けなかったのですが、五歳年上の姉はよく怒鳴られて、トイレにこもって泣いていました。しかし、父親の愛情は姉に注がれていて、おいらは二の次の感がありました。おいらが肉親の情に薄いのはそのせいかと思います。
あれ、話が全く逸れてしまいました。何が言いたかったかというと、父親の仕事の関係で、我が家は床が抜けるほど本があふれていたのです。本は部屋だけでなく、階段にまで置かれていました。もちろん、大人の本がほとんどですから、幼いおいらには読めませんが、姉の部屋には児童ものがありましたので、それを読みました。岩波の絵本などはほとんど揃っていましたので、その辺が読書のスタートでしょう。(もちろん、その前に母親の読み聞かせがあったと思いますが、覚えていません。ああ『サトルの自転車』という絵本だけは記憶に残っています)
小学校も中学年を過ぎると、読書欲が出てきました。印象に残っているのは、佐藤さとるさんの『誰も知らない小さな国』コロボックルシリーズです。当時、我が家には一巻しかなかったので、親にせがんでシリーズ全巻を読破しました。また、図書館に行って、佐藤さんの著作を読み漁りました。もっとも影響を受けたのは『僕の机は僕の国』という本で、それに登場するキャラクターを真似て、ちびた鉛筆に顔を描いて遊びました。それから、手島悠介さんだったかな? 『ふしぎなかぎばあさん』という本に魅了され、そこに登場するご馳走を母親にねだって作ってもらいました。
姉の本棚は魅力的な本が多くて、南洋一郎の超訳ルパンシリーズがあったり、おいらの人生を変えた小林信彦さんのオヨヨ大統領シリーズ『オヨヨ城の秘密』がありました。先日の蔵書整理で『オヨヨ城の秘密』が出てきたのですが、約五十年前の本ですからボロボロで読めません。でも、おいらの宝物です。
中学時代はあんまり本を読みませんでした。友達と野球ゲームのカードを自作して、ペナントレースに明け暮れていたのです。
高校時代も、読書の記憶がありません。部活動がきつかったのです。でも、小林信彦さんの著作は相変わらず読んでいました。
大学時代に入るとおいらは友達作りに失敗し、孤独を味わっていました。そこで、手に取ったのは、歴史物、時代物でした。司馬遼太郎、池波正太郎、そして、吉川英治の『三国志』。恥ずかしながら、おいらはこの歳まで三国志を知りませんでした。高校時代の友達がKoeiのファミコンソフトを持ってきて、初めて触れました。最初は劉備を劉邦、関羽を項羽と間違えていました。無知です。で、ゲームに登場する武将、軍師の数に圧倒されて夢中でプレーしました。ハマりすぎて横山光輝の『三国志』百余巻を全巻買いました。金あったのね。ふしぎ。
社会人になって、というか書店勤めになって、おいらは横浜駅西口地下の学習参考書売り場に配属になりました。だから、文芸、文庫に触れられなくて、ほとんど本を読みませんでした。実のところ、同僚の女性社員のケツばかり追いかけていました。全滅でしたけど。
そして過酷なたまプラーザ。退廃した戸塚。雑誌の付録組みに勤しんでいたおいらに課長が言いました。「文芸のIくんが小田原に異動するから、君が文芸をやれ」
これがおいらの人生を狂わせ、同時にミステリーに淫するきっかけとなったのでした。その後のことは、以前にどこかで書きましたので割愛します。長文失礼しました。
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