第17話 純粋不純

 やあ、おいらです。

 時刻は日曜日の午後三時半。

 隣の酒屋が焼き鳥屋を併設してましてね、そこの酔客の喚き声がうるさくて、ちょっとイラっとしているおいらです。


 まあ、今日も今日とて不埒な堕落生活をしているわけで、皆様に自慢できるような、面白おかしい話もございませんがね、先日、ここに『禿鷹狩り』の上巻が無い! って涙ながらに訴えでましたら、その文章を読んだのか、読まなかったのかは知りませんが、支援者の方から匿名で同書が送られてきました。ヒデキ感激です。この際、『禿鷹シリーズ』を最初から読み直そうかと思います。長いスパンで出されるシリーズ物って、人物相関図を忘れてしまうんですよね。読んでると「こいつ、誰だっけ?」「お前、どこのどいつだ?」ってことがよくあります。記憶力が減退しているのでしょう。だから一気読みすれば何かが見えてくるかも。


 自慢じゃないですが、幼少期からあの病気を発症するまでは、おいら記憶力が抜群の男の子でした。中学高校時代、定期試験の時は真面目に筆写したノートを一回読めば、だいたい高得点を取れましたし、大学の頃は置いといて(だって大学の試験は暗記じゃなくて、考える問題ですからね。この文章には関係なし)、社会人になっても、全社マナー研修みたいので、敬語を問うテストがあって、おいら、社内最高得点を取っちゃった。課長が慌てて飛んできましたよ。なんで飛んできたのかはわかりませんがね。つまり、おいらは記憶力だけを武器に社会で戦ってきたわけです。それが……


 ああ、今では翼の折れたエンゼル。唯一の武器を失い、過去の記憶もだいぶ失いました。子供の頃の記憶はわりあいしっかりしているんですけどね。病気発症前後五年ずつの記憶がどうもダメになってしまっています。おいら、本当に書店で働いていたのかしら? 結婚していたのかしら? 離婚したのかしら? 元妻と一緒に行った旅行の記憶とか全然、残っていません。さみしいなあ。


 えっ? ここまでの文章と、タイトルの関連性が見えないですって! ご指摘ごもっとも。おいら、いつも漠然としたアイデアが頭に浮かぶと、パソコンに直接、打ち込み始めるわけですが、精密な設計図とか、メモ書きとかしてるわけじゃないので、ああ、はっきり言っちゃえばテキトーに打ち込んでいますので、最初に考えていたことと違う方向に脱線してしまうんです。電車の運転手にはなれないな。


 じゃあ、軌道修正。


 と言っても、読書日記なのです。皆様、がっくりされましたか?

 構わず進もう。今回読んだのは、小林信彦自選作品集『丘の一族』『決壊』の二冊です。講談社文芸文庫です。高いです。一冊千三百円もします。単行本が買えます。もちろん、気が狂っているときに購入しました。もう一冊『袋小路の休日』というのもあるんですが、中公文庫版で持っているので買いませんでした。

 みなさん、ご存知かどうか知りませんが、小林信彦さんはサブカルチャーの旗手ともてはやされ、エンターテインメント性の高い小説が多いのですが、この二冊に収録された中編小説は純文学です。芥川賞候補になった作品も多数あります。おいら、純文学なんて読むの久しぶりだ。あれは十年前、小川洋子さんの『博士の愛した数式』と堀江敏幸さんの『雪沼とその周辺』を読んで以来だな。

 まあ、小林さんのこの二冊、万人に薦められるものではありませんが、一つ特徴をいうとすれば、文章が非常に読みやすい。小気味良い言葉遣いなのです。話はちょっと飛びますが、昔の学生は小論文を書く前に、志賀直哉の文章を読んで自分の中の文体を整えたそうです。かく言うおいらは、レポートを書く前に、小林さんの評論を読んで文体を整えていました。みなさんはいかがですか?


 えっ、タイトルの件はどうしたかって? あのー、純文学と純粋をかけただけです。すみません。しかし、純文学って言葉があるということは、“不純文学”ってのもあるのかしら? エンターテインメント系はみんな不純なのかしら?


 ああ、くだらん文章を書いてしまいました。お目汚し、失礼いたしました。

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