第29話 酒酔本酔

 やあ、おいらです。


 サッカーワールドカップ、日本勝ちましたな。けっこうけっこう。この一勝で今まで、関心持っていなかった人々が、熱狂しだしたそうですね。大いにけっこう。関連商品も、売れまくりでしょうな。いやー、日本全国、けっこうけっこう大けっこう。

 でもさ、真剣にサッカーのゲームの内容を観て、選手の動きを味わったり、戦術の妙を褒めている人なんか、あんまりいないんでしょうね。ワールドカップというお祭りをめいいっぱい騒いで楽しもうという人が大多数なんじゃないかなあと思います。でなきゃ、サッカーとなんの関係もない渋谷のスクランブル交差点で騒ぐ必要も、DJポリスも必要ないじゃないですか。これはあくまでも私見です。ああ、同日。新潟県の魚沼郡の田んぼのあぜ道で青年団のにいちゃんたちが一升瓶持って暴れたそうです。そこでDJポリスになったのは駐在さんで、ひじょうに無口な方だったので、まともに喋れず、仕方がないので八海山を一升呑んで、その勢いでトークしたそうです。一般警察役は村のおかみさんが、案山子を振って応援したそうです。最後は全員、酔だおれたそうです。けが人はいませんでした。果たして、この駐在さんは処分されるのでしょうか?


 うわあー、マクラの部分で五百文字行っちゃった。これから、前回の『読書日記』の続きをやるんですが、個人的な思い入れがひじょうに強いので、読んでいて面白くありません。ですので、遠慮なく放り出してください。よろしくま。(ただ、実際に放り出してデバイスが破損しても弁償は一切しませんよ)


『うさぎ幻化行』北森さんが、最後まで書き通した最後の作品です。厳密には雑誌連載ののち、推敲作業の途中で亡くなったので、思いが残ってしまったでしょう。

 おいらが、北森さんに気がついたのは左遷された北里大学売店(ああ、実名上げちゃったよ。まあ、いいか。あそこの関係者はいないだろうし)で楽しく、集英社文庫を品出ししていた時です。「あ、杉田比呂美さんだ」とおいらは一冊の表紙を見て叫びました。表紙のイラストが、おいらの大好きな杉田比呂美さんだったのです。ついでに、著者を見ました。「北森鴻ねえ」未読の作家でした。どんな傾向の作家かも知りません。ただし、オビには骨董ミステリーと書いてありました。「へえ」気持ちが動きます。おいら『ギャラリーフェイク』とか『MASTERキートン』とか好きなのです。「杉田さんだから買っちゃおう」

 北森さんとの出会いは、ジャケ買いだったのです。


 次の日は公休日でした。おいらは乾くるみさんの『イニシエーションラブ』を読んでいました。若かったから読力があったのと、割合と本が薄かった。読み始めが早かった。など、いろいろあって午後三時には読み終わってしまいました。まあ、驚愕のトリックにびっくりしたなあもう。さて、若きおいらの読書欲は止まりません。「ああ、昨日買った文庫を読もう」ついに北森作品と結ばれるのです。

 遠い記憶なので、記憶が曖昧なのですが、その日のうちに、その本『孔雀狂想曲』を読み終えたおいらは、朝一で、文庫化されている北森作品を「自分の分だけ」発注しました。これを後押ししたのは、解説の木田元氏です。木田氏は「北森作品にハズレなし」と明言していました。ちなみにおいら、逢坂剛さんも好きなんですが、ある本の解説に木田氏が登場し「逢坂作品にハズレなし」と言っていました。気が合うなあ。木田氏は鬼籍に入ってしまっていますが、あとはどんな作家が好みだったんでしょう。それはともかく「くそっ。大型店の文庫担当なら命をかけて拡販するのに!」とおいらは歯噛みしながら猛烈に仕事をしていました。(ウソ。北里に左遷された時点で、おいらはやる気を無くしてました。だってここ、店売じゃなくて外商なんだもん。それに、わけわからん医学書置いているし)


 ああ、ここまでで疲れちゃった。あとは簡単に。北森さんは連作短編の名手だと思います。登場人物がぶつ切りの短編より連作には繋がりがある。おいらは創元推理文庫が好きなんですが、名編集者の戸川安宣さんが、短編集のラストで短編の一つ一つがある大きな一つの事件がつながるという『東京創元方式』が好きで、数々の作家が、その方式でデビューしています。

 北森さんは『狂乱廿四孝』で鮎川哲也賞を受賞し、デビューしています。これ、なぜか、角川文庫から出ていました。北森さんと東京創元社に確執があったとも言われています。ところが『狂乱廿四孝』に未完の『双蝶闇草子』がついた文庫が東京創元社から出ているのです。おいら、買えてません。北森コンプリートならず。


 本来ならここでオススメなんかしちゃうところですが、おいらはポリシーでもってしないの。ごめんね。


 北森人気は書店員の中にも浸透しているみたいだから、ちょっと、ぼんやりした、書店員に聞いてみるのも御一興かも。


 なんか、思い通りの文章が書けませんでした。落ち込んで布団に潜る、ぺこり。では。

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