第24話 冒険小説

 やあ、おいらです。


 関東に台風が近づいています。

 以前、どこかに書きましたが、おいらは台風が怖いのです。あの病気を患った六年前、台風の夜に、おいらは発狂し、死にかけました。いつも「死にたい、死にたい」と言っているくせに、本当に死にそうになると「死にたくない」と思うものなんですね。あの時は時間軸が狂い、幻覚、幻聴がひどかったです。それに、なぜかトイレの水が逆流し、パニックになりました。なんだったんだろうな? まあ、アタマの方は気圧の関係でしょうが、トイレは永遠の謎です。


 今回は気が狂うことはなさそうですが、歯が痛いです。気圧のせいでしょうね。


 さて、以前の回でおいらは「バイオレンス小説が読みたい」と言いました。しかし、予備知識が全くありません。おいらは外文はあるポリシーから読みませんので、えっ、何のポリシーかって? それは話すと長くなるんですけど、いいですか? じゃあ、話しますよ。中学三年生の夏です。スンゲーおっかない国語の教師がいたんです。そいつが、おいらの夏休みの課題図書にロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』をぶつけてきたんです。確か、新潮文庫で四冊組だったと思います。初めは意気込んで読んだんですけどねえ……結局のところ、何書いてるんだか全然わかんない。もう、最後まで読めません。こんなつまらない読書体験、人生のうちであとは大学の時のゼミでマルクスの『資本論』を読んだ時ぐらいですよ。『資本論』も読みきれませんでした。読書感想文は、解説を読んで、あとは作文みたいに自分の考えを書いてごまかしました。特に何も言われませんでした。もう、それ以来、外文はこりごり。ひたすら、日文のエンターテインメント、歴史小説とか、時代小説とか、小林信彦とか、あとなぜか『Zガンダム』を読んだなあ。なぜだったかな? アニメ、見ていないのに。そういえば、池波正太郎の『剣客商売』途中まで読んでたんですけど、父親に「お前には、まだ早い」って言われて読むのやめちゃったなあ。今なら、もういい年齢なのかな?


 げっ、すっかり脇道に逸れちゃった。バイオレンスですよ。『狐狼の血』を読んで、火がついちゃったんですけどね。警察小説ではないんですよ。警察小説は佐々木譲の『警官の血』を読めばもう十分。あれは面白かったな。いやいやそうではなくてですね、バイオレンスですよ。でもね、女性が陵辱されるようなエロスはいらない。まあ、おいらもオスのくまですから発情することもありますけどね、今は結構。そういうのが読みたかったらフランス書院とか河出文庫のエロシリーズ買いますよ。あれって、ジイさんが臆面もなく買いますよね。「早く枯れろよ」なんていつも思っていました。


 また、脱線した。でね、乏しい知識と、インターネットの力を借りて、三人の作家をセレクトしたわけです。それは、大藪春彦、西村寿行、馳星周。さて、誰にしよう? 『不夜城』なんかいいかなと思ったんですけどね。おいら馳星周のキャラクターがあんまり好きじゃないんですよ。で、とりあえず今回はパス。大藪春彦かなあとも思ったんですが、ちょっと狂気がすぎるかなあと、怖気付いて見送り。消去法で、西村寿行にしました。でも、エロ度高くないか? ちょっと不安。でも、まあ、オススメ本にあった『君よ憤怒の河を渉れ』をセレクト。支援者に依頼しました。

 さて、届きました。表紙(実際は幅広の帯でした)を見てビックリ。おいらが写っている。何でだ? とよく見たら福山雅治でした。ありゃ、この小説、中国で映画化されていたのね。知りませんでした。


 さて、一読。そしたら、全然バイオレンスではありませんでした。しかし、ものすごーく面白い、冒険小説だったのです。罠に嵌る主人公。必死の逃走劇。執拗に追う刑事。北海道。凶暴な羆。危険なセスナ機のフライト……核心に迫っちゃうからここまでにしておきましょう。まさに、冒険小説のいいとこ取りやあ。近年で、一番かもしれない。昭和五十年代の小説ですが古びていない。読んで悔いなし。早速、次の西村寿行を検索しますが、古本ばっかり。軒並み絶版。おいら、古本さわれぬ、潔癖症だから歯噛みするのみです。各出版社さんに言いたい。「西村寿行、復刊して!」まあ、官能小説もあるんですがね。この際、目を瞑りましょう。西村京太郎ばっかり出してないで西村寿行をよろしく。


 ところで、今日は台風が怖くて、睡眠薬をとっとと飲んで寝すごそうと思いましたが『崖っぷちホテル』が始まる前に目覚めてしまいました。たぶん、完徹ですわ。『雨音はショパンの調べ』でも聞きながら、天井を見つめていますか……

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