第71話 満腹和尚

 やあ、おいらです。


 また、太った。

 しょうがないことですわ。引きこもりで、大飯食らい。精神薬をラムネのように服用していて、痩せる人はいません。どうせ、心通わす友人も、美しい恋人もおらず、ねこは死んじゃったから、たっぷり寝て、飯食って、ちょっと本読んで、インターネットでニュース見て、テレビはちょっとだけ観てさ、(だって、ゴールデンタイムのバラエティーって全然、面白くない。深夜のは面白いのもあるな。あと、最近はドラマをよく観ます。ついに朝ドラに手を出してしまいました。たぶん、飽きるけどね)


 だが、おいら。完全な引きこもりにはなれない。各月一で、精神科と内科に行かなくてはならないのです。いっそ、隔離病棟に強制入院させてもらえないでしょうか。そうですか、無理ですか。

 出かけるとなると、最低限の身繕いをしなくてはなりません。おいらはなぜか、体臭が出ない体質なので一ヶ月くらいならシャワーを浴びなくても相手に嫌がられずハグできます。それに独居房のシャワーは水しか出ないので、いやなんです。でも、ヒゲを剃らないといけないんで、仕方なく入ります。そうですね。ヒゲなんて電子シェーバーで剃ればいいと思う方もいらっしゃるでしょうね。でも、おいらのヒゲ剛毛で固いんだ。しかも二週間くらい伸ばしているからランディー・バースみたいなことになっているの。意味わからんかたは調べてください。


 ヒゲ剃ったら、身体中にアレルギーの薬を塗りますが、在庫僅少です。ケースワーカー の飛田さん、早く連絡ください。

 そうそう、ヒゲの濃い人ってハゲが多いですよね。実はおいらは……髪の毛も剛毛です。しかも天然パーマです。今年の三月に散髪して以来、床屋に行っていません。というのも十日市場駅近辺にはQBハウスがないのです。両隣の長津田、中山にはあるんですけど、たかが散髪に交通費を使いたくなくて放置しています。かなりやばいです。冠婚葬祭には出られません。


 さて、昨日は精神科に行く日だったので、身繕いを整えたのですが、着替えに入った瞬間、問題が起きました。

「ズボンが入らない!」

 若い人はズボンをパンツって言うんですよね。でも、おいらはジジイだからズボンだ! それはともかく、ズボンのボタンがボタン穴に入らないんです。冷や汗が出ました。と言うのも、このズボン「これが入らなくなったら、あなたに、はけるズボンはこの部屋にありません」という最後の砦だったのです。「スウェットで行くか?」一瞬頭をよぎりました。しかーし、前年、スウェットを全部はきつぶしてオシャカにしてしまったのです。残るはパジャマのみ。まさか、新羽までパジャマはいて電車で行く勇気はおいらにはありません。ここは、やはり最後の砦に御出馬してもらわねばなりません。「ムギュー」「ムギュー」腹を必死に引っ込め、ズボンの両端を必死に伸ばして、なんとか、ズボンははけました。出発前に疲れてしまいました。


 新羽に着き、実母の墓参りをして、病院に向かう途中、体調の変化が訪れました。排便したくなったのです。でも、安心。あの病院のトイレは綺麗でシャワーもついている。るんるん。おいらは馬鹿でした。スカッと排便した後、自分の愚かさに気がつきました。「ズボンが入らない!」


 まあ、結果から言うと、十分くらいでようやく入りましたよ。散々な日でしたが、薬局で先月にとても親切で可愛い薬剤師さんが対応してくれたのですが、今月もその娘だったんです。おいら感動。じっくりと、ご尊顔を拝し奉りました。来月もその娘だったら、なんか声かけちゃおうかな。いや、無理だな。


 もちろんいいことが続くわけはなく、帰りの横浜線が火花が出たとか言って小机で停車しちゃって、満員電車の端で潰されそうになりました。


 読書日記はお休み。読んだ本はあるんですけどね。疲れました。たまには読書特集でもやりたいな。このところ顧客満足度が低いみたいなんで、テコ入れをセネガル。いや、せねば。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る