第65話 禍福縄如

 ああ、おいらです。


 櫛の歯が抜けるように、読者様が減ってきています。ここはプレミアムな皆様の暇つぶしの場になったようです。消費税も上がるし、閉店ガラガラするかな?


 まあ、それはそうとして……


 歯が抜けたんです。


 朝起きて、きのこパンを食べたら、きのこが歯に挟まってしまったんです。気持ち悪くて仕方ないから歯ブラシで、取ろうと思ったわけです。歯ブラシをひとかきすると激痛が走りました。実はこの歯、長いこと、おいらを苦しめていた、歯痛の元だったのです。こいつのために、おいらは長いこと一日三、四回、鎮痛剤を飲んでいました。ええ、おっしゃりたいことはわかります。歯医者に行けよですよね。おいらが一般人ならそうしますが、なんたって、健康保険証を取り上げられた身。病院に行くにはいちいち、ケースワーカーさんに相談しなくてはいけません。しかし、九月に新任になったケースワーカーさんは家庭訪問どころか、電話一つかけてきません。完全なる放置プレイです。おいらはひとりぼっちなの。

 話が逸れました。歯です。あまりの痛さに思わずおいらは歯を指で触ってみました。そしたら、なんか、ぶらんぶらんしています。「これ、抜ける?」そう思ったおいらは思い切って、指で歯を抜くことにしました。簡単に抜けると思ったのですが、案外しぶとい。「ダメかなあ?」と諦め掛けましたが、思い切って、力を込めて見ました。歯根が歯茎を通る感覚があります。歯は抜けました。同時に、歯痛も消えました。

 自ら抜歯をしてしまいました。抜いた歯は、存外歯根がしっかりしており、被せ物がしてありました。見た所、虫歯には見えません。たぶん、被せ物の中が腐っているのでしょう。おいらは数え切れないほど歯医者に行ってきましたが、どういうことか、どこもかしこも、ヤブでした。歯医者運がないのです。

 歯を抜くと、熱発が怖いので、解熱剤という名の鎮痛剤を飲みましたよ。鎮痛剤は体に悪い? 知っていますよ、もちろん。でもね、おいらはそうでなくてもたくさんの薬を飲んでいますよ。長生きなんかできやしない。それだったら、いまこの瞬間を楽に生きたい。それだけのことです。


 さて、昨日ですね。月一の精神科通院日です。おいらは前にも書いたかもしれないんですが、便秘なんです。ところが、出かける寸前に排便しました。やな予感がします。というのは一度出るとそれだけでは済まなくて二度三度ともよおして、最終的に下痢便になるまで続くんです。これから外出するのにこれは辛い。案の定、新羽駅に着いて、実母の墓をお参りしていたら、そいつが来た! おいらは冷や汗をかきながら、病院に向かいました。余談ですが、先月お墓に置いていった、鳥のマスコットは台風にもめげず同じ場所におりました。それにしても、この時期の五時半は暗い。真っ暗だ。おいらは夜が怖いので、冬の精神科通いは辛いです。

 病院は、本当は金持ちの入る高級老人福祉施設なので、トイレは素晴らしく綺麗で、シャワーももちろんついています。ここで排便しました。普通のやつです。


 いつもの薬局の女薬剤師は無愛想で嫌なやつばっかりなんですけど、今日、応対してくれた女性は明るくて親切で、何より美人でした。

 いい気分で電車に乗ったわけですが、ここから不幸が始まります。まず、十日市場駅に着いたら強烈に小便がしたくなりました。アパートまでの十分間、地獄のトライアスロンです。泳がないし、自転車もこがんけど。じゃあ、マラソンか。

 なんとか、間に合ったのですが、今度は頭がクラクラして気分が悪い。「脳梗塞か?」おいらは死を覚悟してお布団に潜り込みました。しばらくすると、また便意が……見事な下痢ピーでした。一回で済めばいいですけど止まりません。なんとか落ち着いたので睡眠薬を飲んで就寝しました。最後の悪魔は午前二時にやってきました。

 おいらは夢見心地に眠っていました。すると悪魔はなんの予兆もなくおいらを地獄に突き落としました。ええ、うんこ漏らしました。大人なのに。泣きながらパンツと、ズボンを風呂場で洗いました。パンツには穴が開いていました。はいたばっかりなのに! もうどうでもよくなって寝ました。そしたら四時半に目が覚めて、寝るのが面倒くさくなって、この駄文をかきました。終わり。


 読書日記。『夜光亭の一夜 宝引の辰捕者帳ミステリ傑作選』泡坂妻夫。久しぶりに時代物を読みました。『鬼平犯科帳』を大学生の時に読んで以来かもしれません。同じ文春文庫でも鬼平は決定版とか言って、二度目の新装版が出ているのに宝引の辰は全部、重版未定。今回は傑作選だけど、できれば全話読みたい。しかし、出版界の風潮は傑作選に傾いているようです。まあ、後半の巻になると売り上げ落ちますからね。

 それはそうと、薬局は時間かかるからと、カバンに文庫本、ひそましていったんですがね、いざ、読もうとしたら、表紙がボロボロに……荷物の出し入れでやっちゃったのでしょう。ああ、テンション下がりますわ。まあ、カバーは外していたんで無事なんですけどね。逢坂剛、久しぶりのミステリーだったんで、ショック大きい。でも、おもらしした方がもっとダメージが大きいですよ。人間として恥ずかしい。

 そういうわけで、じゃあ、また。

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