第3話 深夜独語

 やあ、おいらです。今夜は珍しく、睡眠薬を飲んでも眠れないので一筆認めておこうかと思いましてね。二日連続とはちょっと頑張りすぎかとも思いますが、まあ、ぼちぼちと呟きますか。お付き合いいただけたら幸いです。


 この駄文は会員制のバーみたいなものなので、たぶん常連さんしかご来店いただいていないと思っているのですが実際はどうなんでしょう? 今日、新顔の方がフォローしてくださいました。ありがたいことです。でもね、無理しなくていいんですよ。つまらなかったら、すぐにフォロー外してくださいね。なにせ、この駄文はおいらの独り言。自己満足の場なんですから。だってねえ、ユーモア小説家を目指し、小説を書き殴っていたおいらでしたが、箸にも棒にもかからず、ついには小説というものが書けなくなってしまい、連載中の小説『横浜マリンズの栄光』を放棄し、数少ないお客様に不義理を果たしてしまったこと、たいへん、不徳の致すところと思っています。言い訳すれば、おいらの脳みそは、大量の精神安定剤その他の薬物によって細胞が一気に死んでしまい、おバカさんになってしまったのです。若年性認知症の疑いもあります。記憶力がものすごい勢いで低下しています。テレビに出ている若手俳優、タレント、人気グループのメンバー、名前わかりません。乃木坂は白石麻衣さんしかわかりません。生駒里奈さんもわかるのですが、卒業してしまったんですね。あと、なんとか七瀬さんって人がいると教えられたのですが、苗字失念。でもいいんだ。おいらには新垣結衣ちゃんがいるから。


 ほんとくだらない文章だな。知性のかけらもない。呆れて、お客様が逃げてしまうよ。崖っぷちカクヨムですな。


 今日はですね、泡坂妻夫さんの『花嫁のさけび』を読みました。泡坂さんの文章って人によっては全然合わないらしいのですが、幸い、おいらには合っているのでスラスラと楽しく、集中して読むことができました。軽く批評なんかしてみると、犯人が判明した後の説明がちょっとくどいかなあと感じました。でも終盤までは面白かったです。故に、最後はスッキリ終わって欲しかったです。

 ところで、皆さんは泡坂妻夫さんをご存知ですか? おいらは約十五年前に東海道線下りで横浜の次の駅にある書店にいて、そこで創元推理文庫のフェアをやりまして、何の気なしに覗いたら、『亜愛一郎シリーズ』が置いてありまして、著者名に泡坂妻夫とある。おいらは泡坂さんは直木賞作家だから、人情小説作家だと勘違いしていたのです。なぜなら、三十過ぎまで、おいらはミステリーをほとんど読んだことがなくて、知識が皆無だったからです。それまでは時代・歴史小説と小林信彦さんを読んでいました。それが急に文芸書の担当になって、勉強のために『このミステリーがすごい!』を見て、一位だった『葉桜の季節に君を想うということ』を読んで衝撃を受け、それからミステリーを貪るように読みました。遅いデビューですね。そいで、泡坂さんの本も大人買いしたわけです。ちょうどうまい具合に創元推理文庫で泡坂さんの文庫が復刊されていたみたいで、手当たり次第に読みました。でも、出版社重版未定や絶版の文庫もたくさんありました。おいらは古本がダメなので、読めない本は諦めました。


 2009年2月、泡坂さんは鬼籍に入られました。


 風向きが変わったのは、三、四年前のことでしょうか? どうも、頭がぼんやりしてはっきり思い出せません。とにかく、泡坂さんの『しあわせの書』が、どっかの書店のプッシュで売れ出したのです。この本は、ものすごいトリックが隠されているのです。おいらも気がついてびっくりぽん! ついで『生者と死者』が奇跡の復刊! おいら、狂喜乱舞。

 さらに去年の年末から今年にかけて、河出文庫から『花嫁のさけび』『妖盗S79号』『迷蝶の島』。徳間文庫から『夢裡庵先生捕物帳』『奇跡の男』と怒涛の復刊ラッシュ。おいら気絶しそうです。


 まあ、生きる楽しみが、ちょっと増えたということですね。でも、なんかおいらのこれからに暗雲が立ち込めているという予感が、ひしひしと感じられるのです。善人面したやつが、裏でおいらを陥れようと画策している気がしてならないのです。他人が信じられない気分が心に充満し、憂鬱です。杞憂ならばいいのですが。

 では、また。前向きに生きたいものです。無理かな。

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