第120話 神様との戦いの始まり

「そっか。これからも頼りにしてるから、よろしくな」

「こちらこそです」

「えぇ。みんなでこれからもね! 」

「あぁ! これまでも、これからも、永遠にだ! 」


 僕たちは、悪神との戦うことを改めて決意した。

 戦うといっても、別に殺す必要はない。

 ただ、暴走を止めればいいのだ。

 っていうか、ふと思ったのだが、暴走って具体的に何をしているのだろうか。

 いや、そりゃ前に殺されそうになったりもしたわけなんだけどさ、あれは僕の命を狙ったものであって、それなら、僕が、この世界に来なければ問題ないように感じるのだが。

 それはどうしてなのだろうか。

 まぁ、いいっか。そんなこと。

 そんなことより、もっと重要な問題があるので、それについて考えるとしよう。

 そう。それは……。


「ねぇ。それで、葵。悪神はいつやってくるの? 」


 そうそれだ。

 てっきり、もっと早く襲いにかかってくると思っていたのだが、案外遅い。

 いや、遅いのは決して悪いことではない。

 というか、むしろこのまま来なくてもいい。来ないでほしいとまで思う。

 っていうか、ここに来られるといろいろとまずい気もする。

 だって、こんな住宅地で戦闘とかマジでやばい。

 災害もいいところだ。

 というか、僕が呼び寄せてるみたいなもんだし、下手したら普通に僕は犯罪者だ。

 どうにかできないものか……。


「確かに遅いですね。こちらから、行ってしまいたいくらいですね」

「まぁ、確かに。別に僕は先手必勝みたいな感じなわけじゃないけどさ、こんな住宅地で戦闘も嫌だしな……。向こうのとことに行くってのはいいとは思うけどなぁ……」

「何言ってるのよ、葵。そのための無秩序の世界カオス・イフィリオスでしょ。悪神との戦闘になったら、悪神と一緒に何もない平野みたいなとこに転移しちゃえばいいのよ」


 あ! その手があったか!

 いや、でも。それって。


「うーん。確かに案としては悪くないですが、まずアオイ君が無秩序の世界カオス・イフィリオスを使うには相手に直接触れる必要があります。それに、悪神ならば魔力抵抗もかなりなものだと思いますし、転移させるのは難しいでしょう」


 ですよね……。

 僕が、悪神にふれるとか無理ゲーだ。

 いや、無秩序の防衛カオス・アミナをつかえばいけるかもしれないが、相手を強制的に転移させるなんて高度な魔法技術を使える気はしない。

 それこそ、”無秩序の力”を使いこなせるようにならなければ不可能だろう。


「そっかぁ……。それじゃあ、今のうちに私たちがなにもないところに移動しとくってのは? 」

「それだぁぁぁ! 」


 その手があったか。

 相手は僕を殺すために僕のいるところに来るのだ。

 だとすれば、僕たちが何もないところに行けばいい。

 その手があるとは思わなかった。


「よし。それしかないな!無秩序の世界カオス・イフィリオス! 」

「葵、ここって? 」

「近所の公園だよ」

「え? それって大丈夫なの? 」

「まぁ、住宅地よりは全然ましでしょ」


 そう。僕が決戦地に選んだのは、近所のデカめの公園のグラウンドだ。

 こんな、真っ暗ななか公園にいる人はいないだろう。

 正直、もっと確実に誰もいない場所がいいのだが、ここくらいしか思い浮かばなかった。

 まぁ、大丈夫だろう。

 そもそも、世界中どこだって、確実に人がいないような場所はないだろう。

 ある程度のリスクはしょうがない。

 そう思うとしよう。


「そうね。違いないわ。それじゃあ、後は来るのを待つだけってわけね」

「えぇ。いつ来ても大丈夫なようにしなくてはですね」


 これで、あとはニュクスという悪神が襲ってくるのを待つだけだ。

 奴のことは忘れもしない、あの日、あの時。一瞬のうちにこの目にこれでもかというくらい深く刻まれた。

 きっと悪神ならすごいスピードで襲ってくることだろう。

 普通にしていても目に見えない可能性がある。

 なので、僕はちょっとした魔法のようなものを使用している。

 女神様に与えられた魔法の書を昨日の夜パラパラと簡単に読んでいた時に、見つけ、簡単そうだからやってみたら意外とできたのがこの魔法というか、技術だ。

 体内に流れる自分の(女神様からもらった)魔力の循環を目、そして脳も通るようにし、目の力を最大限まで伸ばすのだ。

 この魔法? は、魔力を消費することもなく、なかなかに便利なので現在進行形で重宝している。

 これにより、真っ暗なここでもだいぶ遠くのものまでだいぶくっきり見えるし、なんと素早く動くものも認識することができるのだ。

 目の認識したものを魔力を介入することで脳が処理できるようになるのが、それの原理らしいが、くわしいことはよくわからない。

 ともかく、これはとても使える。


「あ、そういえば、アオイ君。私は悪神が接近してきたら気配で分かりますので、分かり次第すぐに伝えますね」

「そっか! そういえば、ガイアと最初に戦った時に、気配でガイアのことが接近してたもんね」

「お! それは便利だな。よろしくな」


 気配で相手の接近を察知するなんてなんてすばらしいのだろうか。

 いいねぇ!

 よしよし。これでさらに有利になる。


「もう一度最後に確認しとくけど、攻撃な二人がして、なにかあったときは僕は回復をする。そして、万が一の場合は、緊急に向こうの世界に転移する。これでいいな」

「えぇ。いいわよ。任せてね、葵! 」

「ぜひぜひ任せてください」


 こういう打ち合わせは何度してもたりないくらいなのだ。

 しっかり、作戦というものは共通で理解しておかないと危険な目にあいかねないからな。


「あぁ、任せ……無秩序の防衛カオス・アミナ! 」

「喰った!? クッタァ!? 小賢しい! コザカシイ! 人間! ニンゲン! ニンゲン!!! 」


 戦いは突如として始まった。

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