第60話 私があなたを……!!!
[速水りえ 視点]
「エマ。たぶん葵は、最近いろいろあったし疲れすぎたのか、なにかの風邪を引いたんだと思う。私も詳しくないから分からないけど、こういうときはゆっくり休むのが一番よ。だから、引き返すことにはなっちゃうけどエマの
葵を抱きながら、首だけエマの方に向けてそう私の意見を伝えた。
今回の冒険を葵と同じくらい楽しみにしてくれていたエマにとって引き返すという選択は少々嫌なことかも知れないけど、葵のためだ。
きっとエマも納得してくれるに違いない。
「――」
――ん?
エマは突然、道を歩いていたら有名人とすれ違ったときのようにように目をいっぱいに見開いて、絶句した。
そんなに衝撃だったのだろうか。
いや、それもそうか。
あんなに楽しそうにしていたのに突然帰らなくてはならなくなったのだから。
しかし、今は葵が大変なことになっているのだ。
「――楽しみにしてくれていたのはもちろん知っているけど、今は葵が大変だし……。我慢してくれない? 」
「い、いやそうではなくてですね……。何かが近づいてきているのですよ。それにこの気配。これまでに戦ってきた奴らと比べものにならないでしょう。戦闘は私に任せてくれれば良いので、リエはアオイ君を守ることに集中してください」
ものすごい気配!?
一体何が来るのだろうか。
エマは、私にこう言うと愛用している剣に手をかけ、いつでも抜刀できるように準備をした。
「分かったわ。葵は任せて。その代わりそっちは任せるわよ」
「ええ、任せてください!」
頼られるのがうれしいのだろうか。
私は、エマのどこかうれしそうな覚悟のこもったその言葉を聞くと、抱きかかえている葵の顔をもう一度見て、前髪に触れながら微笑みかけ、
――絶対に私があなたを守り抜いてみせる
そう、私は改めて誓った。
一体何に? それは私にも分からない。
ただ、私は何かに誓った。
「――あたちの可愛い子供達、ころちたのって……あんたたちぃ? 」
緊張感あふれるこの状況には不似合いな可愛らしい声が響き渡った。
その声の主、茶色の長い髪を風になびかせる幼稚園児のような見た目をした少女は、私たちに見た目に合わないきつい口調でそう尋ねてきた。
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