第61話(自称)かみちゃま、ガイアちゃまだぞ♪
[速水りえ 視点]
「――あたちの可愛い子供達、ころちたのって……あんたたちぃ? 」
茶色の長い髪を風になびかせる幼稚園児のような見た目をした少女は、私たちに見た目に合わないきつい口調でそう尋ねてきた。
少女のその言葉からは尋常ではないほどの怒りの感情が感じられる。
おそらく少女の子供たちとやらが殺されたことに怒っているのだろう。
この少女は私たちが子供たちとやらを殺した犯人だと思い込んでいるようだけど、人間を、それも赤ちゃんを殺したことなんてないに決まっているので、私たちではない。
――まったく関係ない話にはなってしまうけど……よくその年で子供を産んだわね。
どう見ても私やエマよりずっと年下だ。
おそらく五、六歳くらいで、もとの世界で言えば幼稚園か小学校一年生くらいだろう。
……いくらなんでも早すぎではないだろうか。
いや、ここは現世と比べものにならない危険がいっぱいの異世界だ。
子作りがもとの世界よりちょっと、いや大分早くなっているのかも知れない。
いや、人間の体の仕組みからして早すぎな気もするけど……。
……ん? ちょっと待って。
もしかしてエマって……!
「――ね、ねぇ!? エ、エマって……こ、子作りとかしちゃってるの? 」
「い、いきなりなんですか!!! し、していませんよ、そんなもの。まだ、私、14歳ですよ。それに、まだ私、誰かとお付き合いしたことすらないですし!!! いきなりどうしちゃったんですか!? 」
ふー。よかった、よかった。仲間がいた。
てっきりこの世界は五、六歳で結婚して子作りを始めるのが当たり前なのかと思ってしまった。
生まれてから付き合ったことすらない私は、もうすでに置いてけぼりになっているのではないかと慌ててしまった。
エマがこういうということは、この少女が異常すぎるのだろうか。
「――ねぇねぇ、エマ。この世界で結婚するのって何歳くらいが平均なの? 」
「――うーん。そうですね。結婚は十六歳から可能ですが大体の人は十八歳から二十三歳くらいの間でしますかね……ってどうしてそんなことを? それに今は目の前の存在に集中してください」
もとの世界と比べれば少し早めな気もするがほとんど一緒と言って良いレベルだろう。
ということはあの少女が異常すぎるのだろう。
考えられるパターンとすれば、波瀾万丈な人生を送ってきたか、見た目が若いだけで実はそれなりの年齢であること、それと幼稚園児とかがするおままごとみたいな話をしているのかの三つのパターンだろう。
さて、どのパターンが正しいだろうか?
「――ねぇ? アンタたちさ、もうちょっと一般常識、覚えたら? こっちが聞いてるのに、無視ちて仲良く
エ、エロトーク!?
確かに子作りがどうとか言ってたけどエロトークというほどではないでしょ!
……たぶん。
基準が分かんないのでなんとも言えないけど……。
――それにこれは決してイチャイチャアピールしているわけではない。
葵が私の方に倒れてきたのでこうなったのだ。
しょうがない。しょうがないのだ。
……あぁ!言い訳をしたいけど、言い訳をするとどっかのだれかさんに『
ここは言い訳をせず、ちゃんと聞かれていたことに答えてあげるとしよう。
「あなたの子供たちを殺したのは私たちじゃないわ。人違いよ」
「――」
きっぱりと言ってやった。
エマも同調して何か言ってくれると思ったのだけど、ただ静かに少女を見つめている。
いや、この表情はにらんでいるという表現が適切だろう。
一体どうしたのだろうか。
「――はぁ!? なにゆちゃってるの? ばればれなのよ。あんたたちのうそなんて。……っていうかうちょなんてよくつけたね。こんなちょうこだらけのこのばちょで! 」
「しょ、証拠って何よ?」
「いや、あたちの後ろに、可愛いそうなあたちの子供達の変わり果てた姿があるじゃない」
かわいそうな子供達の変わり果てた姿?
一体何のことだろうか。
少女の後ろにあるのは先ほど倒した鬼の軍勢の残骸だ。
……もしかして、この鬼の軍勢がこの少女の子供たちということなのだろうか。
「それにあんたたち、おにたちだけじゃなくて、あたしのかわいい、ごーれむやでゅらはん、きつねちゃんたちも殺ちたわね! 許ちゃないの。ゆるちゃないのよ。……覚悟ちなちゃいっ! 」
――確定だ。
今までエマと倒してきた敵を全員言い当てられた。
おそらく、全員がこの少女によって生み出された存在だったのだろう。
そして、それだから子供たちと表現したのだろう。
点と線がつながった。
……ん? ちょっと待って?
何かが忘れられているような……。
あともう一体倒した敵がいたような気がするのだけど……。
私にも生みの親のこの少女にも忘れられてしまうとは可愛いそうであるがしょうがない。
――ッキン!!!
「――ッ! 」
「――物騒なのは、あなたの方ではないのですか?」
いつの間にか刀を鞘から出したエマが私の前に立っていた。
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