第49話 言い訳っていいわけ?


「っていうか、りえってエマとかハンネスさんとか国王の部屋の場所知ってんの?」


 勢いよく部屋から出たのは良いものの、どこに行けば良いのかが全く分からず、僕はドアのすぐ前で立ち止まった。

 知らないのも仕方がないだろう。

 何せ、エマと遊ぶときや稽古の時はエマやハンネスさんが僕たちのところまで来てくれているので、こっちから会いに行くことはしたことがないのだから。

 もしかしたら、りえなら知っているかもしれないのでそう聞いてみた。


「もちろん、知らないわよ」


 ですよね~。

 よくよく考えれば、りえはほとんど僕と一緒に行動しているのだから、僕の知らないことを知っている可能性は限りなく低いだろう。

 ……はてさて、どうしよっかな。

 やっぱり、稽古の時間まで待つしかないだろうか。


「でも、私はさんの居場所は分かるわ」

「おぉ、さすがりえ。で、師匠はどこにいるの?」

「ふふ。私についてきて、葵! 」




 りえの案内でついたのは最初に師匠と模擬戦をした中庭であった。

 そこには確かに師匠がいた。

 おそらく、また誰かと模擬戦をしているのだろう。

 好きだねぇ~、模擬戦。師匠は基本いつ見ても誰かと戦っているイメージがある。

 っていうか、なぜりえは師匠がここにいることを知っていたのだろうか。


「到着! ほら、思った通りさんがいるわよ」

「――確かに。よく師匠の居場所が分かったね」

「前に私が早起きしすぎて暇だったときに王城の中を散歩してたんだけど、中庭にさんがいるのを見て、もしかして今日もいるんじゃないかなって思ったのよ。……まぁ、確証はなかったんだけどさ」

「あんな自信満々だったのに、確証はなかったんだ……」

「実際会えたんだし、良いじゃない。そんなことは過去の話。私は過去は振り返らない女なの」    


『過去は振り返らない女なの』って超万能な言い訳だよな。


って? 」


  おっと、危ない危ない。

 つまらないことをつい言ってしまいそうになってしまっ……


「――さっむ。なに、急にダジャレ言ってんのよ。そもそも、さっきのは言い訳じゃないし。事実を述べたまでだし」


 ………………。やっべ!

 もしかして、口に出して言っちゃた感じ!?

 聞こえちゃってたの!?

 うっわ。マジ最悪。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る