第39話 おやすみなさい!


「はい、それではいきますよ。刹那の帰還イピストゥロフィー!!! 」


 ――エマは魔法を放ち、僕たちは最初に師匠と出会った王城の城門の前に帰還した。


「ただいま! ねぇねぇ。今日は何する? 」

「なんでもいいですよ」

「僕も何でも良いよ」


 そんな会話をしながら、僕たちは客室に歩いて戻っている。

 この流れ、間違いなくあれをやることになるだろう。

 今日こそは、絶対に……!


「じゃあ、今日も昨日と一緒でこれで勝負ね! 」

「良いですね! 今日こそ私が勝ちますからね」

「良いよ。今日こそは僕が勝つからね! 」

「じゃあ、私から行くわよ! 」




「よっしゃぁぁぁ!!!! 僕の勝ちだぁぁぁ!」

「うわぁぁぁ! あとちょっとで勝てたのに! 」

「明日こそ、明日こそ、私が勝ちますからね! 」


 僕たちは一体何をしてるのかって?

 人生ゲームのようなものを三人でやっているのだ。

 スマホもテレビもないので、暇な時間はこうやって過ごしているのだ。

 ちなみに今日は僕が初勝利した。

 師匠にも勝ったし今日はなんだかついているな。

 こういう日はなんかさらに良いことが起こる気がする。

 実に楽しみである。

 

 おっと。そういえばあと少しで夕飯の時間だな。

 今日のメニューは何だろうか。

 この客人生活の楽しみはズバリ食事である。

 稽古という名のイジメによって、家に早く帰りたいと最近では思うようになってきているが、この食事だけが救いだ。


「そろそろ夕飯の時間なんじゃないか? 」

「そうね。今日は一体どんなメニューなのかしらね」

「そうですね。では夕ご飯としましょうか」




 そんなこんなで夕食を食べ、シャワーも浴び、あたりはすっかり暗くなり、僕は特にすることもなくなった。

 元の世界と比べると少し寝るには早い時間だが、この世界ではすることも少ないのでそろそろ寝るのもアリである。

 それに稽古で体をとても動かしているので、意外と眠くなるのだ。


「ふわぁぁぁ。そろそろ寝る? 」

「ふわぁぁぁ。そうね。とくにしたいこともないし、眠くなっちゃたし寝ようかな」

「オッケー。じゃあ、明かり消すね」

「おやすみなさい~」

「おやすみ、りえ」


 僕はランプを消し、自分のベットに入り目をつむった。

 すると、今日は疲れたのか、ブラックホールに吸い込まれるように意識が一瞬にして遠のいていった。




『私はあなたをこの世界に召喚した存在です』


 ――あぁ、今日は本当に良い日だ。

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