第38話 果たして僕はダサいのか
「ハッ! 思わず余計なことを口走ってしまいました」
「てっきりそのことかと思ったけど、そっちだったのね。紛らわしいわね。……バレてしまったらしょうがないわね。本当のことを正直に言ってあげるとしましょう、エマ」
うっわ、僕もさっき『バ、バレちまったらしょうがない。本当のことを正直に言ってやろう』的なことを言おうとしたのに先を越されてしまった。
ここまで考えていることがきれいに一致するとは驚きだな。
……って、そんなことはどうでも良いんだ。
今重要なのは、僕の服のセンスの話である。
僕はセンスが良い……はずだ。
今だって稽古があるのでと、動きやすく汚れにくくとおしゃれ◎、機能性◎、という優れたコーディネイトである。
まさかセンスがないなんてことないだろう。
「まず! 最初に明言しておくわ。葵は服を選ぶセンスが微妙だわ」
「そうなんですよね。アオイ君の服は別にダサいわけではないんですが……」
「その水色のTシャツと白のズボンのコーディネイト……なんというか主張がとっても強いのよね。それに、葵ってそんなのばっか着てるわよね。もとの世界でもほとんど同じの着てたでしょ。せっかくたくさん用意してもらってるのに」
「そうですよ。なにせリエとアオイ君のために服をたくさん用意させていただいたのですから、ぜひ、いろんな種類着てください。毎日服は替わっているんでしょうが、ほとんど変化がなくて飽きちゃいます。」
た、確かに……。その通りかもしれない。
水色のTシャツと白のズボン、これは昔から大好きなセットだ。
確かに、派手かも知れないけど、かなりおしゃれではあると思う。
まぁ、そもそもおしゃれなんて人によって価値観が違うのだし、とても曖昧なものなので、あんま自信を持って言えないのだけど……。
それに、前から自分以外の人間からの評価はあまりよくないしな。
確かに、りえの服のコーディネイトは、とても普通の女子中学生とは思えないほどにこだわられたものであり、工夫されたものだ。毎日、しっかり考えているのが伝わってくる。
なんというか、常に全力で持っている知識を総動員して過去の自分を超そうとしているように感じるのだ。
それに最近のりえは、朝の時間に何十分とかけてその日に着る服を選んでいるのだが、凄く楽しそうで、なんか見ていてこっちがほっこりしてくる。
きっと、服を選ぶのが好きなのだろう。いや、好きというか、好奇心に身を任せ、わくわくの感情を抑えきれずにいるのかも知れない。
まぁ、とにかくそんなりえからすれば、ずっとほとんど変化のない僕の服装は少し、いや大分残念に映るのかも知れない。
ちなみに、なぜ異世界に来てまで服の話をできているかというと、異世界転移したときが下校中だったこともあり、転移したときに着ていた制服しかもっておらず、動きにくかったこともあり、エマが着替えにと僕たち二人用の服を用意してくれたからだ。
服を買うなら普通は数着だと思うのだが、さすがは王女様。
百着近い服を用意してくれたのだ。
確かに僕は、これに似たような服や同じ服しか着ないのでエマへのお礼という点でもいろいろな種類の服を着るようにするのは良いだろう。
「姫様、リエ殿、アオイ殿。稽古も終わったことですし、そろそろ帰還するといたしませぬか」
「あ、そうね。それじゃあ、エマ。よろしく! 」
「そ、そうですね。早く帰るとしましょうか」
「はい、それではいきますよ。
――エマは魔法を放ち、僕たちは最初に師匠と出会った王城の城門の前に帰還した。
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