第88話 チート能力は夢の中だけの力!?

「それじゃあ、葵。さっさと例の魔法を使えるようになっちゃって」

『そうですね。それでは、葵さん。先ほど渡したの本の中から無秩序の世界カオス・イフィリオスについて書かれたページを探してください』


 僕の名前は立花葵。

 ほんの数日前まではごくごく普通の中学生だったのだが、いろいろあって異世界に召喚され、勇者になり、現在チート能力を女神様からお教えしてもらっている最中である。


「――えーっと。無秩序の世界カオス・イフィリオスっと……。お! あった! 」

「どれどれ見せて! 」

『見つかりましたか? そこには私が考えたその魔法を放つための方法や意識をするべきことなどを書きました。まずはしっかりとよく読んでみてください』


 好奇心旺盛なりえにも見せながら、僕はそこに書かれていることを一つ一つ黙読した。

 女神様にもらったこの本は、なんというか体育の実技の教科書のようで、その魔法を使えるようになるために必要な踏んでいくべきステップや、意識するべきことなどが図やイラスト等を使用して分かりやすく説明されていた。

 とても分かりやすい。

 さすがは女神様である。

 

 ――えーっと、なになに……。

 無秩序の世界カオス・イフィリオスとひとくくりにまとめても、六つの能力があり、それぞれの能力によって難しさが全く変わってくるらしい。

 自分だけでの空間移動、自分と他者の同時の空間移動、他者の強制的な空間移動という三つの同じ世界内での移動に関する能力。そして、自分だけでの世界間移動、自分と他者の同時の世界間移動、他者の強制的な世界間移動という計六つの能力があるそうだ。

 それと、世界間移動を使えるようになるには、まずは三つの同じ世界内での移動を完璧にする必要があるらしい。

 

 ちなみに同じ世界内での移動は刹那の帰還イピストゥロフィーと大差ないように思えるかも知れないが、全然違うらしい。

 どうやら刹那の帰還イピストゥロフィーは自分が一度その場所に行き、テレポート場所として設定しなければ、移動できないらしく、それに対して無秩序の世界カオス・イフィリオスは言ったことのない場所でも、特定の条件を満たせば移動することができるらしい。

 まさに刹那の帰還イピストゥロフィーの上位互換といった感じである。


 そして、問題の使用方法だが、それぞれの能力による使用方法の差はほとんどないらしい。

 大きく二つの使用方法があり、一つは行きたい場所を座標を計算して求めるて移動するというもの。そしてもう一つは、明確なその場所のイメージを完全に集中して、イメージして移動するというものだ。

 女神様のおすすめはイメージを使用する方法らしい。

 というのも、座標の計算は難しく、それをするためにさらに別の魔法を使う必要があり、なおかつ同じ世界の中ならともかく、世界間の移動となると計算の量が莫大なものとなり常人には使いこなすのが難しいらしい。

 

 ――うーん。

 イメージするだけなら簡単にできるようになりそうだが、どうなのだろうか。

 

「イメージするだけで使えるようになるんだったら簡単なんじゃないの? 」

「ちょうどそれ思ってた。以外と簡単そうだけど、難しいのかな? 」

『そうですね。イメージは天性の才能の面が強いので、以外とすんなりとできてしまうかもしれませんね。どうです? さっそくやってみて、確かめてみませんか?』


 ――そうだな。

 一回やってみるのも重要か。


「そうだな。一回やってみるか」

「そうこなくっちゃ! 」

『では、ガイアやエマさんが待つ家まで魔法で戻ってみましょう』

「分かりました。やってみますね」

『――それでは、葵さん。イメージはできましたか? 』


 ――家と言う名の城をイメージする。

 集中して、集中して。

 一切の雑念を抱かず……。


無秩序の世界カオス・イフィリオス! ……って、あれ? 」

「え……失敗なの? 」

『うーん。どうしてでしょうか。実はこっそり葵さんの思考を読み取っていたのですが、イメージは完璧でした。特に問題ないように思えるのですが……あっ! もしかして、葵さん。魔力の流れは自分で分かりますか? 』


 ――魔力の流れ?

 なんだそれ。いかにも異世界ファンタジーっぽい言葉だが、そんなもの分からない。


「え? 何ですか? それ……。まったく分からないですけど……」

『あー。完全に失念していました。ちなみにりえさんは? 』

「魔力の流れ七日は分からないけど、こっちの世界に来てから体の中の血液? 見たいなのの流れを敏感に感じるようになったのだけど、これのこと? 」

『えぇ。それの認識で間違いないと思います。……葵さん。はっきりと言います。葵さんは魔法を使うために必要不可欠な魔力をほとんど持っていないようです。これは生まれ持っての特性のようなものなので仕方がありません』


 ――え? 魔力を持っていない? 魔法が使えない?

 ってことはチート能力は夢の中だけの力だったてこと……!?

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