第94話 エマの答え
「――そういうことでしたか。私のことは気にしないでくれて大丈夫ですよ。それほどまでに私のことを思ってくれていたという、そのお気持ちだけで私は十分うれしいですから」
――本当に良い子だ。
こんなにも純粋で心優しい人は今までに見たことがない。
エマは本当に凄い人だ。
「――それで、もとの世界に帰るのはいつ頃を予定しているのですか」
「それなんだけどね。実はまだ分からないっていうかあんまり考えてないんだよね。できるだけ頻繁に戻ってきたいって思ってるけど、そうもいかないかも知れないし」
「そうでしたか……」
――やはり、それを聞いてきたということは僕たちがいなくなってしまうことが寂しいのだろうか。
本当に申し訳なくなってくる。
「――ねぇ、葵。食べないならこれもらうわね」
「うっわ。いきなり何……って人の朝食とらないでよ」
「いいじゃん、ちょっとだけなんだし」
「いやだって、りえだって自分の分あるでしょ」
「もう食べ終わったから、葵の食べてるんでしょ。というかもうみんな食事は終わってるわよ。一人だけだだあまりだったからもらってあげただけじゃない」
「みんな早! 」
どうやらまだ食べてないのはこの中で僕だけらしい。
確かにみんな食事は終わっていた。
ガイアはともかくみんなも食べるの結構早いんだな。
いや、どちらかというと僕が話に夢中になって全く食べていなかったからかな。
『「「「ごちそうさまでした! 」」」』
結局あの後、りえにこれ以上取られないようにと急いで食事を終わらせた。
早食いには自信があるとは言え、せっかくの豪華な朝食なのだ。ゆっくり食べたかったな。
『葵さん。朝食も食べ終わったことですし、練習をしましょう』
「練習? 魔法のですか? 」
『えぇ。その通りです。次の段階は自分と他者の同時の空間移動です。ちょうど良いことにここでの用事が済んだ皆さんは王都に帰りますよね。なので、練習兼テストとして、実践的に使用してみてください。行き先は王都、りえさんとエマさんの二人と同時に転移することができれば成功です』
「分かりました。頑張ります! 」
言われてみれば確かにちょうど良い。
どうせ帰ろうと思っていたところだったのだ。
やってみるか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます