第95話 無秩序の世界《カオス・イフィリオス》!

『ちなみにお二人もそれでいいですか』

「いいわよ」

「もちろん大丈夫です」

『なら、葵さん。自分と他者の同時の空間移動のコツを教えます。これの難しさは、他者の体に自分の魔力を一瞬だけ流れ込ませ、その魔力でその相手と一緒に転移するのです。最初は相手と体に触れ、魔力を直接伝えられる状態でやると良いですよ』

「うわ。難しそう……」

「そんなことはないと思いますよ。それなら私の刹那の帰還イピストゥロフィーも同じような原理ですし」

「そう? 」

『とにかく実践あるのみです。一度やってみましょう。もし、失敗してしまったときは二人は私が転移させますし、なんなら二人なら自分の力で帰れるかも知れませんしね。失敗は恐れなくても大丈夫なんですよ』

「そうそう。葵、さっさとやってみなさいよ」


 ――はぁ……。

 そこまで言われたらやるしかない。

 よし! やってやるとしよう。

 だが、その前に。


「分かった。やってみるわ。……だけどその前に。改めて、女神様本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします」

「私からもありがとね」

「本当にありがとうございました」

「もちろんガイアもありがとな」

「ついでみたいな扱いはやめてほしいのよ」

「ごめんごめん」


 よし。これでしっかりとお礼も伝えられた。

 あとは僕が魔法を使うだけだ。

 絶対に成功させてやる。


「「キャッ! 」」

「――いや、だって相手の体に触れた方が良いって女神様が……」


 女神様に言われたとおりにしようと、手を握ったら悲鳴を上げたうえでなんかにらまれた。

 膝枕はOK。一緒の部屋で寝るのもOK。だけど、手を急に握るのはNGなのか……。

 本当に分からないことだらけだ。

 

『体に触れてれば良いので、手首とかでよいのではないですか』

「あ、そっか。……これでいい? 」

「早く魔法使いなさいよ」


 おっとなんだかあたりが強いですね。

 まぁ、いつものことか。


 ――ふぅ。

 集中だ、集中だ。

 一切の雑念を抱かず……数日間過ごした王城をイメージする。

 落ち着いて、より細かく、より鮮明に……。


 そして、女神様に貸してもらった自分の体内に流れている魔力を感じ取る。

 それをりえとエマの手首から流し込む。

 完全にイメージの領域なので、本当にできているかは正直怪しい。

 ただ、今は集中してそれだけを考える。


 そして……!


無秩序の世界カオス・イフィリオス! 」


 ――魔法を詠唱すると周囲が一瞬暗転し、気がつくと先ほどまでイメージしていた懐かしの王城の前に立っていた。

 それも、りえとエマの手首をしっかりと握った状態で。

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