第42話 これって夢って言って良いのかな?

『ふふ。別に本気で怒っているわけではないので大丈夫です。次からは気をつけてくださいね』

『すみませんでした! 以後は気をつけます。……あのぉ、ところで話は変わるんですけど、なんで今日僕をここに招待してくれたのですか? 』


 そう。さっきの話を聞いて新たに生じた疑問である。なぜ僕をここに招待してくれたのだろうか。

 わざわざ招待してくれたぐらいなのだから、必ず何かしらの理由があるのだろう。


『――招待した理由ですか。……そうですね。……この世界にはスマホも電話もないので遊ぶ約束をするのも手紙を書くか、こうして直接話して決めるしかないのですよ。言うなれば、これは電話をして遊ぶ約束をしているようなものでしょうか』


 スマホに電話って、僕らがもともといた世界のことまで熟知しているんだな。さすがだ。


『いえいえ、いろんな世界を見ることを趣味にしているので』


 いろんな世界を見ることが趣味か。良い趣味だな。


『ありがとうございます』


 ――。話が進まねぇ。ちゃんと反応してくれるのはうれしいんだが……。


『あのぉ。一旦僕の考えていることを読み取らないようにするのって可能ですか? 』


 別に今は良いんだが、今後のことを考えると困るな。

 いつか取り返しのつかない事件が起きてしまいそうだ。

 さっきも大分ギリギリではあったが……健全な中学生三年生の男子としてちょっと人にばれたらまずいようなことがバレてしまったら先ほどの比ではないほどヤバい。社会的にもヤバい。

 やはり、なんでもかんでも考えていることを読み取られてしまうのはさすがに困る。


『た、確かに、それもそうですね。葵さんも一人の男の子ですもんね。プライバシ―に欠けていました』


 いや、そういうことじゃないんだけど!

 確かに、『健全な中学生三年生の男子としてちょっと人にばれたらやばいな』とはちょっと考えてしまったけど……。

 まぁ、大事件になる前にこれくらいのことで考えていることを読み取られないようになったのでよかったといえばよかったのだろうか?


『――話を戻しますけど、遊ぶ約束ってどういうことですか? 』

『あぁ、それですね。簡単な話です。りえさんと葵さんと私で一緒に集まって遊びませんかという私からの誘いです。そのときにでも葵さんがずっと気になっている私の望みを話そうかな、と。そうでもしないと、私は一生伝えられない気がしましてね……』


 女神様の望みをきけるのならばもちろんYESだ!

 まぁ、望みがきけないのだとしても女神様に会いたいしYESなのには変わりないのだが……。


『僕でよければ喜んで! ……それで一個質問なんですけど、いつどこで遊べるのですか? 』

『――うーん。基本いつでも良いですよ。暇しているので。……場所は封印の森と呼ばれる場所で。……といっても分かりませんよね。それではこの地図を渡しておきます。詳しい情報は国王ジュピターに聞けば分かると思いますよ。』


 女神様は何もない空間からでてきた地図を僕に渡してくれた。なにかの魔法だろうか。

 僕は宝の地図のように丸められたその地図をポケットにしまった。

 それにしても封印の森か。不気味な響きであるが、女神様が指定してくれた場所なのだから良い場所なのだろう。


『ありがとうございます。りえにもこのことは伝えておきますね』

『お願いします。……おっと。この世界の崩壊が始まったようですね。』


 世界の崩壊?

 確かに言われてみると何もない闇のような何かが真っ白な世界を少しずつ呑み込んでいる。これが世界の崩壊というやつなのだろうか。


『この世界が崩壊したら自動的にあなたはもといた場所に戻ります。というか、これ自体が精神だけが移動しているようなものなので元いた場所に戻るというのも変な話なのですが……』


 えぇ! 今って僕、精神だけの状態なんだ!

  今になって始めて知った。

 ――こっわ! いや、別に何も怖いことなんてないんだがなんとなくこっわ。


『――ふふ。それではそろそろお別れの時間です。また、お会いしましょう。バイバイ~ 』


 この夢の中での対談で、だいぶ女神様との距離が近づいた気がする。

 きっと、女神様の新たな一面を知れたからなのだろう。

 そういえば、望みの話をしていたときはどこか悲しげな印象を抱くような話し方だったのに、その話が終わってからはとても明るいな。

 望みとはそれほどに重いものなのだろうか。


――たとえどんなに重い望みだったとしても僕は必ずあなたの力となって見せる


 っと、僕は改めて揺るがぬ覚悟を誓った。


『――バイバイ~!』


 ――僕はうなずくと、女神様に笑顔バイバイと手を振りながら、世界ごと闇に呑み込まれた。

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