第107話 原宿といえばクレープ!(葵君の中で)
「よし。次はクレープだな。原宿といえばクレープだもんな」
「そうね。この辺はクレープ屋さんが多いもんね」
「くれーぷ? というのがどのようなものなのかとても気になります」
クレープは僕も食べたいし、エマもどんな食べ物か知らないみたいだし、それにせっかくだ。
もちろん買いたいのだが、問題はお金か……。
中学生の僕の財布の中には五千円と小銭がすこししか入っていない。
いや、正確には家にあるもう一つの財布にはもっとたくさん入っているのだが、それは食費などの必需消費用のお金として確保している。
なのでお小遣い用のこの財布には、さっき買ったネックレス分を引いた二千円ほどしか入っていないのだ。
流石に三人分、買えるとは思うが、ここは原宿だ。
物価がすごそうだ。
本当に足りるのかが少し心配だ……。
まぁ、最悪の場合は僕が我慢して二人分だけ買えば良いだろう。
「やっぱ結構並んでるな……」
「そうね……」
「お客様。メニューをどうぞ。混雑防止のため先に注文を決めてくださるよう皆様にお願いしておりますのでご協力お願いいたします」
「ありがとうございます。……はいこれ。どれにする? 」
「私はどれが良いのか分からないので、お二人にお任せします」
「まぁ、最初はそっか。それじゃあ、このイチゴクレープとか良いんじゃないかな」
「それでは、そのいちごのくれーぷというのにしようと思います」
「エマはイチゴのクレープということで……ってやっぱけっこうするなぁ……」
八百円……。
ただのイチゴのクレープでさえこの値段なわけで、他のフレーバーはもっと高い。
二人分はなんとかいけるけど、三人分は無理だ。
しょうがない。
今回は我慢するとしよう。
「うーん。私は、さっきネックレスをおごってもらったし、今回はパスで良いわよ」
そう言ってくれるのはありがたいが、りえも食べたいだろう。
我慢するのは僕で良いので、ここは遠慮せずに食べてもらいたい。
「いや、遠慮しなくて良いよ」
「流石にそんなにたくさんおごってもらうのは悪いよ」
「別に全然大丈夫だって」
「そう? そこまで言うのなら……」
助かった。
折れてくれるようだ。
この感じだと、お互い譲らず面倒なことになりそうだったが、それを察知して対応してくれたのかも知れない。
「それで、葵はどれにするつもりなの? 」
「僕は金ないし、パス」
「えっ! 私におごるつもりなのに自分の分のお金はないの? 」
「まぁ、そんな感じかな」
「いや、普通に自分の分買いなよ。私はいいし」
「それなら、私もパスでも良いですけど……」
「エマもパスはまず絶対なしとして、りえのはド正論なんだけどさ、これだけは譲れないんだよね。なんというか、男のプライド的な……」
「なにそれ」
言葉で説明するのは難しいが、男としてのプライドなのだ。
だから、譲れない。
これだけは!
「次のお客様、ご注文をどうぞ」
「やばっ! 順番きちゃったんだけど……で、りえはどれにするの? 」
「葵が好きなの頼みなさいよ。私はパスでいいし」
「それじゃあ、イチゴのクレープ二個でいいね? それと絶対にりえにあげるから」
「はいはい……」
「ふふっ……」
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