第3話 襲い来る絶望
「――ギ――った! 」
聞き覚えのある奇妙な声が聞こえる。何を言っているのだろうか……まったく聞き取れない。
意識がもうろうとしていくのを感じる。
どうしてだろう……いや決まっているな。
この奇妙な状態はおそらくあの気味の悪い女性によるものだろう。
――あの奇妙な声の女は、一体何者なんだ?
奴は何がしたいんだ?
なんで体に力が入らないんだ?
隣にいたりえは大丈夫だろうか?
意味不明なことが起こりすぎて、頭が追い付かない。
ここは冷静に、一つずつ分析していくべきだ。そう頭では分かっていても、脳がいうことを聞かない。
それに加えて、だんだんと眠くなってきた。もう一つのことしか考えられない。
――あぁ、このまま死ぬんだと。
おもえば、短い人生だった。
こんな早く死ぬんだったら、もっとやりたい放題しとけばよかった……。
『許しません! こんなところで死ぬなどあってはなりません! 』
もうろうとしていく意識の中で、今までに聞いたことのないほど美しい女神様のような声が聞こえた。そんな気がした。
「――なたさ――は」
『
――なんだろう、そのかっこいい言葉は。まるで異世界ファンタジーのようだ。
思い返せば、子供のころは多くの夢を抱いていた。いや、過去形ではなく、現在進行形かもしれない。子供の頃からの夢は今も
勇者になって世界を救うこと、魔王となって全世界を支配することなどなど……。
今思えば、一つも達成することはなかった。
まぁ、異世界にでも行って、完璧な最強主人公にでもなければこんな夢をかなえるなんて無理なんだろうけど……
「――にを」
さっきまで、
おそらく、さきほど、女神様のような声の持ち主にかけていただいた
――ってなんでこの状況に、僕は適応できているのだろうか。本当に意味が分からない。
アニヲタである僕からすれば、この展開はあるあるなのだが、普通に考えればあり得ないだろ!
……いや、この際どうでもいいか。流されよう。流されてしまおう。
今の僕はアニメの世界の登場人物だ。そういうことにしておこう。
『大丈夫……ではないですよね。今
………………。まさか、“お二人”ってことは……!
いや、正直うすうすは分かっていた。でも気がつかないふりをしていた。できるだけ他のことを考えるようにしていた。それを認めたくなかった。
女神様は“お二人”といった。僕はどうなったて良い。常に明日死んだとしても悔いが残らないようにと生きてきたのだから……。
――死にたくはない。死にたくない……。
でも、りえを救えるのならこの命を捨てたって構わない。りえを救いたい……。
あっ! やっと理解した。これはきっと夢なのだ。こんなのはアニメの世界でしかありえない。夢だったのだ。そうすればすべてに合点がいく。
そうだ。そうだったのだ。よくよく考えれば当たり前だ。魔法なんて普通の現実世界ではありえない。こんなにあっさりと殺されかけるなんてありえないのだ。
うん。うん。これは悪夢に違いない。
『私に残された時間は短いようです。このまま私が消えてしまえば、またあなたたちは……』
意識がはっきりとしてきた僕は目を開けようと試みた。
……開いた。
僕はどうやらうつ伏せになっていたようだ。
僕はどうにか右に向いた。
そうして振り向いた先には、僕の視界の先には大量の深紅の血を流したりえがいた。
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