第97話 謝罪
「――お! エマではないか! 初めての冒険はどうじゃったか? 」
「楽しかったですよ、お父様」
「ならよかった。エマ、それにアオイ殿もリエ殿もけがなどはないか?」
「この通り元気いっぱいだから大丈夫ですよ。ご心配ありがとうございます、国王陛下様」
「よしよし。ここに来てくれたと言うことは、冒険の成果を教えにくれたのだろう。良かったら、聞かせてくれ」
「もちろん良いわよ。それじゃあ、葵。お願い! 」
――おっと、すがすがしいほどに他人頼りですね。
まぁ、もともと僕から説明するつもりだったから良いのだけど、なんかこの世界に来てから厄介ごとは僕に押しつけられてばかりな気がする。
いや、そうでもないか。
どちらかというと、僕が自分からするようになったといった感じだろうか。
周りの環境で人は変わると言うけど本当なんだな。
もとの世界ではりえに頼ってサボってばかりの僕だったのに、今では役割が逆になったのだ。
「――はぁ……。まぁ、良いんだけどさ。……それじゃあ、簡単に説明させていただきますね」
僕は出発した後、ガイアという少女に襲われ、命を落としかけたこと。そして、その少女の正体は五大神、そして五大悪神の一柱だったということ。その少女に連れられ、目的の女神様の元へ行け、女神様と話をすることができたことをかいつまんで説明した。
「五大悪神か……。本当によくぞ無事に帰ってきてくれた。改めて、リエ殿、アオイ殿。エマを守ってくれてありがとう。感謝する」
「いやいや、むしろこっちがエマに守ってもらっちゃって」
「うんうん。葵はともかく、私は本当にたいしたことやってないから」
「何を言っているのですか。リエがいなければ私は簡単に殺されていたことでしょうし、アオイ君のあの魔法がなければ私もリエも今ここにいられていません。本当に二人のお力あってのものなんですよ」
「そう言ってくれるとうれしいよ」
「エマは優しいわね。ありがとう」
――本当にうれしい。
そう言ってくれるとあの時の自分を少しでも認められるのだ。
「それで、アオイ殿よ。ワシに伝えねばならぬことがあるのだろう。これ以外に謝りたいことがあるのではないのか」
「――え? どうして、それが? 」
「そのくらい目を見れば分かるのじゃよ」
――目?
こんなにいとも簡単に見破られるとは思わなかった。
さすがだ。
親バカな面が目立つが、本当に国王としては優秀なのだろう。
「流石ですね。僕が陛下に伝えたいこと、それは謝罪です」
「葵……謝罪って何のことを? 」
「アオイ君、一体何を謝罪するというのですか」
りえはともかくエマもまったく心当たりがないようだ。
エマは当事者なので、ある程度は察しはつくとは思ったが、やはり本当に心優しいのだろう。
「――うむ。聞かせてくれ」
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