第99話 絶賛練習中!!!
「——
「だめじゃない! はやくもう一回! 」
僕の名前は立花葵。少し前まではただの男子中学生であった僕だが、なんやかんやで異世界に転移し、気づいたら勇者になってて、いろいろあって五大神という存在をなんとかするという目標ができた。我ながら、本当に波乱万丈というかなんというか本当に目が回る展開が続いている。
「いわれなくともやりますとも。……
「アオイ君。もっと気持ちを込めて詠唱してください」
今何をやっているかというとある魔法の練習である。僕は元の世界に帰ろうと「
「気持ちかぁ……。やってみる。……
『うーん。もう少しもとの世界を鮮明にイメージしてみてください』
この魔法。かなり難しいのだ。それもそのはず。世界を移動できる魔法なのだ。どう考えても異世界ファンタジーの世界でも完璧な最強主人公が最後とかに獲得できるようなチート魔法だろう。そりゃ、簡単にできるわけがない。
「鮮明にイメージですか? 分かりました。……
「もう! 何回失敗してるのよ。しっかりイメージしなさいよ」
——イメージ。イメージ……。イメージはできてる気がするんだが、できないということはまだ不十分だということなのだろう。
「イメージしてるんだけどなぁ……。
「ア、アオイ君。いったん休憩にしませんか? がむしゃらにやってもできるとは思えませんし」
たしかにそうなのかもしれないけど。なんかできる気もするんだよな……。ていうか、いったん休憩したところでできるようになる気もしないし。
「いや、そろそろできそうな気がするんだよ。……
『エマさんの言う通りですね。いったん休憩にしましょう。それに葵さん。そろそろ……』
はぁ……。それもそうなんだよなぁ……。イメージの問題かもしれないし、一旦休憩してリフレッシュするのも重要かもしれないな。これでラストにするかぁ……。
「じゃぁこれがラストだ。
全身の脱力感。これはやばい。ダメな奴だ。魔力切れだろうか。どうやら、またやらかしてしまったらしい。
「あぁ、葵! また魔力切れ起こしちゃったじゃない」
「アオイ君、大丈夫ですか」
『あ、葵さん。頑張のも大切ですが、自分の魔力量を忘れないようにしてくださいね』
「——うぅ」
魔力切れを起こすと、体に力が入らなくなるだけでなく、頭痛がしたり、気持ち悪くなったり、それなりにいやなタイプの風のような症状を起こす。……つらい。
「はぁ……葵。葵って意外と馬鹿なの? 」
バカとは失礼な。まぁ、バカみたいなことをしたわけだけど……あぁ、頭痛い。
「アオイ君。自分の魔力量ぐらいわかるようにならないと向こうの世界に行った時に困りますよ」
それもそうなんだよなぁ。でも魔力をあんまりうまく感じられないんだよなぁ……あぁ、気持ち悪い。
『——はぁ、葵さん。本当に気をつけてくださいよ。
「あぁ……生き返るぅ……。ありがとうございます。女神様」
こうなった時はいつも女神さまに魔法で魔力を分け与えてもらって治してもらっている。
本当に女神様頼りなのである。
ちなみに、魔力が切れただけで何でこんな病気みたいな症状になるのか疑問に思ったこともあったのだが、どうやら魔力の限界を超える状態で魔法を放つことによって体力を代わりに消費するため起こる現象らしい。
つまり魔力を分け与えてもらえばだいぶ楽になるものの、体力もやばいほど消費されているので、症状は治ったとしてもしばらくは安静に過ごす必要があるのだ。
『本当に気をつけてくださいよ』
「気を付けようとは思っても、今どれくらい魔力を使ってるのかが実感わかなくて、難しいんです……」
僕は体をゆっくりと起こしながら、そう言った。
難しい。というかまったく魔力がわからない。
魔力を魔法で分け与えてもらうときに体が熱くなるような感覚に陥るので、それが魔力なのだろうと大体の予想はつく。
のだが、実際にどのくらいの魔力が自分の中に存在するのかは全くわからないのだ。
だからこそ、自分には後何発撃てるのかがわからないのだ。
「魔力なんて直感で何とかしなさいよ」
「直感って……それができたら苦労しないんだけどね……」
「うーん。私も何となく生まれながらわかる感じなので、アオイ君にいいアドバイスはできそうにないです。申し訳ありません」
そうだよなぁ……。ここにいるメンバーは生まれながらというか、才能のような感じに呼吸するかのように実に自然に魔力を感じ取れるのだ。
呼吸の仕方を他人に教えられないのと同様に、魔力の感じ方を知るのも難しいのだ。
『私にも魔力をどう感じ取るかを教えるのは難しいですが、アドバイスならできます。葵さんが現在保有している魔力量から計算して、おそらく十発は打てるでしょうがそれ以降は魔力切れになったとしてもおかしくないでしょう』
あ、そっか。魔力を感じられなくても回数で考えればいいのか。
その考えは頭になかったな。
『なので、葵さんはこれからは十発以上は絶対に魔法を放たず、その場に私がいなければ最後の十発目で必ずここへ戻ってくるようにしてください。もし、向こうの世界に行ったときに魔力切れになってしまってはかなわないですからね』
「確かに回数で考えるのは妙案ね」
「そうですね。アオイ君、これからは何発魔法を放ったのかをしっかりと数え、決して無理をしないようにしてくださいね」
「確かにそうだな。今は女神様がいてくれてるけど、向こうに行ったらそうもいかないもんな」
そう。今ここには女神様がいてくれている。
だからこそ、魔力切れの状態になっても大丈夫な部分があるが、向こうの世界ではそうもいかない。
魔力を分け与えてもらえるから簡単に治るのであって、それができなければマジで死の危険性だって出てくる。
「それじゃあ、葵。カオスに魔力を回復してもらえたし、魔力切れの対策もできたことだし、もう一回再挑戦しましょう! 」
「鬼か! ちょっとくらい休ませてよ」
「だってぇ……」
「りえ。アオイ君も頑張ってくれているので、ちょっとの休憩くらいさせてあげましょうよ」
「それもそうなんだけど……」
本当に疲れた。
今日だけで何発
遡ること国王との対談の後……。
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