第44話 ベッドシーン?


「まぁ、私はそういうところも好きなんだけどさ……」


 ――。

 ――――。

 ――――――は?

  理解が追いつかない。

 今、なんて言った?

 好きってどういうことだろうか。

 いや、これはアレに決まっている。

 期待しちゃいけない。

 そういうところが人として、友達として、好意が持てると言うことだ。

 LOVEじゃなくてLikeなのだ。 


 ……うん。

 当たり前だな。

 こんな僕にそんな感情を抱くわけがない。

 僕は誰かと付き合ったことなど一度もなく、恋愛経験れんあいけいけんはゼロなので女性のそれっぽい反応に敏感になってしまっているだけだろう。

 友達として好意が持てるということ以上の意味はないに決まっている。

 

 ……たぶん。

 いや、そうに決まっている。

 ……たぶん。

 

 あぁ!

  頭の中がハチャメチャで何も分からない。

 ただ分かるのは、もう何も知らないふりをして至って普通に起きるなんて無理だということだけだ。


「――それにしても、葵の肌ってきれいよね。ここまできれいな肌の中学生男子とかそうそういないと思うんだけど……」


 確かに僕の肌は中学生男子にしては、意識してしっかりとケアしている方なので、褒めてもらえるのはうれしい。

 うれしいのだが、りえがそう言いながら頬に触れてきたのだ。

 起きているのに言わない僕も僕だが、ここまでくるとりえもりえだ。

 僕がもしかしたら起きている可能性とか考えないのだろうか。

 

 ――やっぱり抜けている。

 

 それにしても、女子が僕の頬に触れているとか、さすがに恥ずかしいのだが……。

 りえの指はそれなりに冷たく、思わずビックとしてしまった。


 ――。

 ――――。

 ――――――決めた。


 決めてしまった。

 もうどうなったいい。

 今まで隠してきた、男としての本能が引き出されてしまった。りえが悪いのだ。

 こんなに男を思わせぶりな態度をとっておいてお預けとかあり得ない。

 僕はやるときはやる男なのだ。

 

 現在、この部屋には僕とりえしかいない。

 僕がどんな行動をしようと助けは来ない。

 それにここは異世界だ。

 法律だって元の世界とは違う。

 バレたとしても捕まらないかも知れない。


 僕の計画はこうだ。 

 僕の目の前でしゃがみ込んで僕の頬に指を触れているりえを急に飛び起き地面に押し倒す。

 その後すぐにキスをして悲鳴を上げられないようにする。

 

 もし、声を上げられてしまったとしても大丈夫だろう。

 僕たちは年頃の中学生だ。

 夜にそういうことをしていたって何ら不思議ではない。

 きっとそう納得してくれるだろう。

 

 そして、押し倒した後は服を脱がして……ふふ。

 

 ――立花葵、今から童貞を卒業します!


 そうと決まればあとは実行に移すだけだ。 

 さて、どのタイミングで押し倒そうか。

 

 あぁ、ヤバい。

 メッチャ緊張してきた。

 無理もない。

 今から犯罪すれすれのことをして童貞を卒業しようとしているのだ。

 しかも、りえを相手に……。

 緊張で冷や汗が出てきた。

 それに、これから訪れるであろう天国のような時間を想像すると体がどんどん温かくなってきた。


 まぁ、それも当然か。

 だって、僕は今から大人になるのだから


「――って、あっつ。それに顔も真っ赤じゃない。……どうしちゃったのよ。……熱でもあるのかな」


 ――はっ! ヤバい。

 やっぱ顔が真っ赤になってしまっているようだ。

 ついでに体温もとても高くなっているようだ。

 緊張で心臓が速く鼓動こどうすることで、体温が上昇し、顔がほてってしまっているのだろう。

 

 ……ヤバい。

 これでは僕が起きていることがバレてしまいそうだ。

 こうなったらバレる前にやってしまうまでだ。

 夢にも見た、人生初体験を今からするのだ。

 そう考えるとワクワクが止まらない。

 よし、今……


「――大丈夫!? 葵!? 」


 ――。

 ――――。

 ――――――。

 そうだ。

 そうだった。

 完全に忘れていた、一番大切なことを。

 

 りえがこんなに心配してくれているというのに僕はなんて言うことを考えていたんだろうか。

 本当に恥ずかしい。

 りえは、大切な友達なのだ。

 

 ふぅ……。

 一旦落ち着こう。

 今、僕がやるべきことはりえをけがすことなどではなく今この状況から脱出することだ。

 どんな作戦で行けばよいだろうか……。

 よし!

 この作戦で行くとしよう! 


「は! ここは? 」

「うっわ。びっくりした! 起きて早々どうしたって言うのよ」

「りえがいるってことは……。よかったぁ~」

「本当にいきなりどうしちゃったのよ。やっぱり葵って、……頭がおかしいの? 」

「失礼な! 僕の頭はとても正常ですけど! 」

「じゃあ、どうしちゃったていうのよ」

「――いやさぁ。メッチャ怖い悪夢見てさ」


 そう。

 作戦とは怖い夢を見てたから顔が真っ赤になり、顔もほてってしまったというものだ。

 決していやらしいことを考えていたからではないのだ。

 なかなかに言い作戦な気がする。

 僕の演技力も相まって、この作戦がバレることはないだろう。


「あぁ、通りで。なんか顔赤いなって思ってたのよね……。で、どんな夢見たの? 」


 ――。

 ――――。

 ――――――。

 ……考えてなかった!!!

 どうしよう。

 とりあえず適当なこと言っとけば良いだろう。


「えーっと。怖い夢って感じの夢だよ。とにかくメッチャ怖い悪夢だった……かな? 」

「なんでそっちが疑問形なのよ」

「ま、まぁ。夢ってそんなに思い出せないものじゃん。だから、しょうがないって言うか、なんて言うか」

「まぁ、それもそうよね。……じゃあ改めて、おはよう、葵! 」

「おはよう、りえ」


 なんとかなったな。

 よかった。それにしても、りえのさっきの言葉はどういう意味だったのだろうか。

 いや、友達として好意が持てるってこと以外の意味はないよな。

 りえを押し倒さなくて正解だったと思う。

 もし、リエも確定で僕に恋愛対象としての好意を寄せてくれているならともかく、友達としてならばそれは許されないことだ。

 

 ……ふぅ。

 それじゃあ、起きたことだし、女神様との遊ぶ約束についての話をするとするか。

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