第54話 旅は道連れ世は情けってね!

「――ってふぉとが……ゴクン。あったんですよ」


 僕の名前は立花あおい

 僕は今、なんやかんやあって女神様と交わした遊ぶ約束のことを国王に朝食を食べながら話していた。

 ちなみに朝食は完食した。

 ……まじで、おいしかったぁ。


「ほぉ。アオイ殿とリエ殿ををこの世界に呼んだ女神様、すなわち六柱の最上位の神々の一柱が会いに来てほしいと頼んだと言ったということであるか。……ふむ。ならば一刻も早く会いに行くべきじゃな」


 『一刻も早く会いに行きべき』ということは、すぐにでも出発してOKということなのだろうか。

 それは非常にありがたいのだが、僕とりえは勇者である。

 そんな簡単に出出かけてしまっても良いのだろうか。

 早く女神様と会いたいのだが、一日、二日くらいの程度なら全然待つのだが、本当に良いのだろうか。

 よし、聞いてみよう!


「勇者なのに、そんな簡単にここを離れてしまって良いんですか? 」

「むしろその逆じゃな。勇者だからこそどこに行っても構わないのだ」


 ん? 勇者だからこそ構わない? 一体どういうことなのだろうか?


「なに、簡単な話じゃ。外の世界はすさまじい強さの魔物がわんさかおり、ただの一般人ではあの壁を越えた先の世界にすら行くことが禁止されておる。もし、二人が勇者ではなく、ただの客人であったならいろいろと手続きが大変じゃった。しかし、勇者は自由に活動することができるのじゃ。すなわち勇者である二人には手続きなどいらぬということである」


 なるほど。

 それもあって勇者になることをおすすめしてくれたのか。

 本当にありがたい話だ。


「それにじゃ、ハンネスにみっちり鍛えられた結果、二人はそれなりに強くもなっておる。魔物に襲われたとしても問題なく対応できると考えたのじゃ。ワシは、女神様というお方を待たせてもいけないとも思うのぉ。移動に必要な馬車もすぐに用意するで、一刻も早く会いに行くべきだと考えるぞ」


 さすがは国王陛下。

 まさしく神対応というものである。

 それでは、お言葉に甘えてさっさとりえと出発するとするか……。


「それもそうですね。では、馬車の準備ができ次第出発させていただこうと思います 」

「そうか、そうか。それでは、馬車の手配を……っと。……ふむ。そういえば肝心なことを聞き忘れておったな。その、女神様というお方は一体どこにいらっしゃるのじゃ? 」


 あ!

 そういえば、女神様から地図を受け取っていたな。

 たしかあの地図は……っと。

 よし、これこれ!


「女神様からこの地図を受け取ったんですよ。確か、女神さまに詳しい情報は国王ジュピターに聞けば分かると教えてもらったんですけど……国王ジュピターって国王陛下様のことであってますか?」


 僕は女神さまにいただいた地図を国王に見せながら、そう尋ねた。

 まぁ、でも。

 女神さまのあの様子だとほぼ百%で確定な気もするのだが……。

 というのも、なんでもお見通しのあの女神様のことだ。

 僕が知っている人のことを言ってくれているに違いない。

 となると国王であり、僕の知り合いなど一人しかいないということだ。


「ふむ。いかにも、わしこそが国王ジュピターである。じゃが、残念じゃな。詳しい情報も何も、わしは知らぬ……じゃが、どうにもこの地図のこのマークのある位置、どうも見たことがあるように感じるのじゃよ。……あ! あそこじゃな。——封印の森」


 そうやぁ、そうだったな。

 確かに女神様が封印の森に来と言って負ったようなきもする。


「あぁ、そこです。そこ。確か、女神さまもそこに来てくださいと言っていたような気がします」

「ふむ、封印の森か……。そこまでではないが、少しここから遠いところにあるし、あの森はいろいろと謎が多い。二人だけでは心細いじゃろうし、同行者をつけるとしよう」


 ――同行者!

 それはとても心強い! ありがたい提案だ。

 いったいどんな人に同行してもらえるのだろうか。


「――ふむそうじゃ。わしは閃いてしまったぞ」


 『適任か……』ということは、先ほど国王改め、ジュピターさん……って言いにくいな! 国王のままでいいな。

 

 ——っと、話が完全に脱線してしまったな。

 時を戻そう。

 おそらく目的地を聞いてきたのは適任者を見つけるためだったのだろう。

 それにしても閃いたとは何だろうか。

 超適任な人でも思い出したのだろうか。


「――エマよ。アオイ殿とリエ殿と旅に出かけるのはどうじゃ? 」


 国王は、ゆっくりと立ち上がり、優しい表情でエマにそう尋ねた。


 ――ふむ。

 確かにエマが一緒についてきてくれるのが一番だな。

 もし全く知らない人と行くことになったらいろいろと気を遣うことになるだろう。

 その分エマは友達なので、気を使う必要はない。

 ま、まぁ、王女様なのだから本当は気を遣うべきなのだろうが……。


 そ、それは一旦おいておくとして、もう一つの良さはあの強さだ。

 もし旅の途中でもしものことがあったとしてもあの異次元の力があればバッチリ大丈夫だろう。

 よほどのことがなければりえだけでも十分だろうが念には念をだ。

 心配なことと言えば、エマが王女様である点だろうか。

 普通に考えれば、王女様は簡単に城から出られないだろう。

 しかし、エマは僕たちと会ったときのようにちょくちょく”家出”ならぬ”城出”をしているようだし、まぁそれも大丈夫だろう。


 もう一つあげるとするならばエマの気持ちだろうか。

 エマが行きたがらないのならば、無理に連れて行くことはできない。

 僕は食事を中断して、今に集中した。

 さて、エマの回答はいかに!


「――。――――。――――――。――お、お父様。……い、今。なんと言いましたか? 」


 エマはまるで信じられないことを聞いたかのように驚愕の色を見せながら、国王に聞き返した。

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