第52話 どえむとどえす

「私たちってドMとドSだと思う? 」


 ――。――――。――――――。


「――あ、あのぉ……。 とはどのような意味なのですか」

「「――ッ! 」」


  ——そうだった。完全に忘れていた。

 エマたちこの世界の人々は、日本語を知っているわけではないのでたこの世界にない言葉を言った場合、相手は理解できないのだ。

 そして今回は、ドMとドSという言葉がこの世界に存在しないのでエマに伝わらなかったのだろう。


 ……はぁ。

 完全に杞憂きゆうだったようだな。


「——えーっと。ドMとドSっていうのは性格の一種だ。優しい人とか面白い人みたいな感じかな」

「へー。性格の一種なのですね。知りませんでした」


 エマは全く疑う様子もなく、あっさりと受け入れた。

 ちょっと心が痛い気もするが、決して間違ったことを言っているわけではないと思う。

 ドMもドSも生まれ持った性格のようなものだし、優しい人とか面白い人と同じくくりでも大丈夫だろう。

 

 友達を紹介するときに『この人は優しい人です』『この人は面白い人です』みたいに『この人はドMな人です』とか『この人はドSな人です』といったって何ら違和感はない。

 最もこんな紹介をする人は嫌われるだろうが……。


「そ、そうね。そんな感じよ。ごめんね。知らなかったのね。さっき聞いたことはなかったことにしてくれればいいわよ。本当にごめんね」


 りえがエマの質問にかぶせるようにそう答えた。

 確かにドMとドSがどんな性格のことを指すのかを聞かれては答えるのは難しい。

 ナイス判断だな!


「——うーん。まぁ、それでいいのなら構わないのですが.……。あ、ところでお二人はなぜこんなところに? 」


 ――。 ――――。――――――。


「「あっ!!! 」」

 

 僕とりえは互い顔を向き合い、心の声を盛大にらした。

 完全に忘れていた。

 そういえば、女神様と遊ぶ約束をしたので、それをエマや、師匠、国王に伝えるためにここに来たのだ。


 ――ってか、どうしてここにエマがいるのだろうか。

 ここには師匠しかいなかった気がするのだが……。


「——えーっと。それは後で伝えるよ。ってかさ、エマってどうしてここにいるの? 」

「爺やと鍛錬をしていたのですよ」


 あ!

 そういえば、師匠と誰かが戦っていたな。

 あの戦っていた相手がエマだったのか。


 ……ん?

 アレ?

 エマ参加するとこの城が半壊する恐れがあるといっていたような気もするが……。

 どういうことなのだろうか。

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