第47話 番外編:純粋無垢
[速水りえ 視点]
「は! ここは? 」
「うっわ。びっくりした! 起きて早々どうしたって言うのよ」
びっくりしたぁ。
葵が急に跳ね起きたのだ。
それに『ここは? 』って、起きて早々何を言っているのだろうか。
「りえがいるってことは……。よかったぁ~」
「本当にいきなりどうしちゃったのよ。やっぱり葵って、……頭がおかしいの? 」
やっぱり、葵は頭がおかしいのだろうか。
本当に何を言っているのかが理解できない。
「失礼な! 僕の頭はとても正常ですけど! 」
「じゃあ、どうしちゃったていうのよ」
「――いやさぁ。メッチャ怖い悪夢見てさ」
――怖い夢?
だから顔が真っ赤になっていたのだろうか。
うなされていた的な感じだろうか。
それにしても怖い夢か。一体どんな夢を見たのだろうか。
「あぁ、通りで。なんか顔赤いなって思ってたのよね……。
で、どんな夢見たの? 」
「えーっと。怖い夢って感じの夢だよ。
とにかくメッチャ怖い悪夢だった……かな? 」
「なんでそっちが疑問形なのよ」
葵が首をかしげながらそういった。
なんで自分が見た夢なのに疑問形なのだろうか。
「ま、まぁ。夢ってそんなに思い出せないものじゃん。だから、しょうがないって言うか、なんて言うか」
「まぁ、それもそうよね」
いろいろと突っ込みたいポイントはあるのだが、まぁそういうことでいっか。
「――じゃあ改めて、おはよう、葵! 」
「おはよう、りえ」
さて、今からは何をして過ごそうかな。
まぁ、何をするにしても暗いままではいろいろと不便なのでとりあえず明かりを付けなら、葵に聞いてみた。
「今から何して過ごす? まだ四時過ぎとかよ」
「じゃあ、今日見た夢の話でもしていい? 」
夢の話?
さっき言っていたメッチャ怖い悪夢というやつのことだろうか。
さっきはほとんど忘れていたようだけど、思い出してきたのだろうか。
「夢って? さっき言ってた悪夢のこと? 」
「えーっと。今日二つ夢見たから、悪夢じゃない一個目の方の話」
もし私がお笑い芸人だったなら『何じゃそれ』とズコッってこけていた。
それにしても一個目って。夢ってそんな一日に何個も見るようなもんだっけ?
「分かりにくいわね。ていうか、夢って一日に二回も見ることなんてあるの? 」
「えーっと。今日は一旦深夜に起きて、そのあと二度寝したからかな? 」
二度寝したからといって二回夢が見られるものなのだろうか。
まぁ、それはおいておくとして、一体どのような夢だったのだろうか。
夢はぶっ飛んだ内容になることもよくあるので、昨日見た夢の話なんかをするのは嫌いではない。
「ふーん。で、どんな夢だったの? 」
「まぁ、夢って言っていいのか分かんないだけどさ。寝たらさ、急に何もない真っ白の世界に出て、僕たちを助け、この世界に召喚したくださった女神様と再会できたんだよ」
うっわ。
また、女神様。
女神様、女神様と、ちょっとうるさいのよね、葵。
夢にまで出てくるって、一体どれほど日常的に考えているのだろうか。
私と一緒に話してるときなんかも考えているのではと思うと、ちょっと、いやとてもイラつく。
「よかったじゃない。……それで? 」
「それがさ、何でも僕には”無秩序の冥護”とかいう力があるらしくてさ。その力についてと女神様の望み的なもんが聞けるらしくてさ、今度りえも含めて女神様に会いに行こうと思っててさ。りえはどう思う? 」
よかったわね。
好きな人と会えるなんて!
……って。え、ちょっと待って。
「良いんじゃない? ……って私も? 」
「もちろん」
「はぁ? 葵が作り出した”設定”に私まで付き合わせないでよ」
もちろん冗談だよね。
一体何を言っているのだろう。
もしかして、葵って夢と現実がごっちゃになってる系のヤバい人なのかな。
「それが、”設定”じゃないだな。これを見たまえ」
「なにこれ、地図? 確か、寝るときはこんなの持ってなかったもんね。ってことはさっきの話は、本当だったってこと? 」
「そういうこと」
ちょっと、安心した。
夢と現実がごっちゃになってる系のヤバい人だったのなら、さすがに縁を切るべきなレベルの問題だしな。
でも、それはそれで意味不明なのだが。
夢の中で実在する人物と電話的な感じで話ができたと言うことなのだろうが、そんなことは普通はあり得ない。だけど……。
「普通は夢の中で実際に会うとかあり得ないけど、……異世界だしワンチャンあるのかな? 」
そうなのだ。異世界なのだし、あり得るのではないかと思ってしまうのだ。もうちょっと思考を整理する時間が正直ほしいところだが、これ以上考えても答えは出ないだろうし、そういうものだと受け入れるとしよう。
「で、結局女神様に会いに行くのはどうする? なんかりえも含めて三人で話したいらしくてさ。一緒に行かない? 」
私も含めてか。確かにあのとき助けてもらったことの感謝も伝えないといけないし、それについてはもちろん大賛成だ。
「そうなんだ。私はもちろん良いわよ。じゃあ、エマちゃんや、
「そうだな。じゃあ、明るくなったら言いに行くか」
「いや、今から行っちゃおうよ。だってもうだんだんと明るくなってきてるし、大丈夫でしょ」
「それもそうだな。それじゃあ、行くか」
――私たちは、エマちゃんや、
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