第29話 模擬戦改め、命がけの戦闘


――カキンッ! カキンッ! カキンッ!


 模擬戦が開始してから、だいたい十分ほどが経過した。

 模擬戦を行っているこの中庭には剣と剣のぶつかり合う金属音ものすごい早さで響き渡っていた。

 模擬戦というより、互いの命をかけた命がけの戦闘の方がしっくりくるほどの白熱ぶりであった。とはいっても、ただの木の棒と木刀のぶつかり合う音なのだが……。

 にしても、ただの木の棒と木刀なのでまるで本物の剣がぶつかり合っているかのような音が出るのはなぜなのだろうか……。


「はぁはぁはぁ……」


 りえは体力が限界に達したのか木刀を地面に突き刺し、動きを止めた。


「ふむ。この私と互角に戦えていたのは驚きでしたが、そろそろ体力の限界のようですな。そろそろ降参しますかな?

「はぁはぁ……降参? ……そんなの……私の辞書にはないわ。……私が……あなたに攻撃を与えられるまで、付き合ってもらうわよ! さん! 」


 せっかくかっこいいことを話していたというのに、最後の名前間違いのせいで台無しだ。あーあ、もったいない。


「その意気やよし! どこからでもかかって来てくだされ、リエ殿! そして、私の名前はハンネスです」


 こっちも最後の余計な言葉でかっこいいのに台無しだ。最近はりえが間違えてもスルーしていたので、もう諦めたのばかりに思っていたが、一応まだ期待しているようだ。

 いや、コレは戦闘中といこともあってアドレナリンが出てテンションが高くなっているだけかもしれない。


「はぁはぁ……。次は……こっちからいくわよ! ワイシャツさん! 」


――カキンッ! カキンッ! カキンッ! カキンッ! カキンッ!


 りえとハンネスさんは戦闘を再開したようだ。

 とはいっても二人の動きは速すぎてとてもじゃないが僕の目では追いつけないのだが……。

 時々聞こえる金属音と衝撃波のような者が戦闘の継続を僕に伝えてくれていた。


 ……僕は一体何をしているのかって?

  聞いて驚くなよ、今僕は木刀を脇に挟みながら腕を組み、仁王立ちで二人の戦闘を意味ありげに眺めているのだ。

 何で模擬戦に参加せずに眺めてるんだって? というのも模擬戦改め、命がけの戦闘開始直後……

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