第13話 こ、これが運命の出会いってやつ!?
「やばいやばいやばいやばい!!! 来てる来てる来てる来てる!!!」
りえが慌てたようにそう言った。
「あ、葵。一生のお願いがあるんだけど。
「嫌に決まってるよ!!! そんなこと言うんだったらりえがおとりになって僕の逃げる時間稼いでよ! 」
「あんた、レディーファーストって言葉知らないの? とにかくあんたが囮になりなさいよ」
「今の時代、男女差別はよくないですよ。りえさん……ってヤバァァァ!!! 」
りえと
目の前には約十匹のゾンビが、左には五匹、右には七匹、そして、後ろからはさっきからずっと追いかけてきている三匹のゾンビがいた。つまり二十五体近くのゾンビの群れに囲まれたことになる。
おそらく、ずっと追いかけてきていた三匹のゾンビは、僕たちが奴らの群れのいるここへ追い立てていたのだろう。
ゾンビのくせに団結力がハンパない。
全方位を囲まれた今、もうこの包囲を突破するのは不可能だろう。
……あぁ、これは、もうおしまいだ。
「――オワッタ」
ゾンビにかまれたらよくゾンビになるって言うけど、ゾンビになった後って意識ってあるのだろうか? いやないか。
ここは、ポジティブに考えよう。意識がなくなるならほとんど死ぬのと一緒だ。かまれて一瞬で死ねるならなかなかに楽な死に方と言えるんじゃないだろうか。
手足を引きちぎるような
そう思うようにしよう。
「ああ、もうだーめだ。短い人生だったな。死んだら化けて葵の枕元(まくらもと)に。……って葵も一緒に死んじゃうから無理か」
りえも諦めたようだ。
りえだけでもと思ったが、この状況では無理だろう。いや、やらずに死んで後悔するより、やって死んで後悔した方がまだマシか。
りえが生き延びれるとは限らない。それに確定で僕は終わりだろう。
それでも……。
「ふぅ……。今から僕が囮になる。どんくらい効果があるか分からんけど、りえは全力で逃げろ。……最後くらい僕もカッコつけたいしさ! 」
「え? いや、何言ってるの? 逃げるなら二人で……。私だけなんて……」
「おい、ゾンビども! お前らなんて僕の拳で充分なんだよ! りえ、生き延びてくれよ! おりゃあああああ! 」
無理だと頭ではわかっている。
でも可能性はある。まだ、拳は試してないのだし、チート能力がこれかもしれない。それにゾンビなら大声出しながら動き出した僕の方に馬鹿みたいに全員集合して、りえが生き延びれるかもしれない。
運命よ。奇跡よ。女神様よ。僕に、僕らに、お慈悲よ!
「
すべてを投げ出した僕の前に
「大丈夫? ですか? 」
かわいらしい少女は首をかしげながら、僕たちにそう尋ねた。
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