第63話 目覚めと状況把握
「――リエ。――れて――ください」
「――かったわ。――せたわよ! 」
「――か~ら~! ――を無視ちゅんなって――るじゃん!!! 」
……ッチ! うっさいなぁ。
人が気持ちよく寝ているってのに……。
雑音がうるさすぎて寝れないじゃないか!
……はぁ。
うるさい雑音の正体は、エマとりえ。そして知らない奴の声である。
おそらく僕が寝ている間に新しい友達でもつくって一緒に遊んでいるのだろう。
いや、この声色的にけんかでもしているのだろうか。
まぁ、どちらにせよ、なんて迷惑な話なのか。
寝る環境としてもこれ以上にないくらい悪い。
とてつもなく悪いのだが、今はとてつもなく眠たいのでもう一度寝ることにする。
さて、僕の睡眠力が勝ち無事眠れるか、雑音が勝ち睡眠を妨害されるか……。
いざ、勝負だ!
「――されました。――
――ゴーンッ!!!!!
うっるさ! ヤバすぎだろ!
睡眠を妨害するどころか、鼓膜が破れそうになるほどの轟音が鳴り響いたぞ。
この魔法は、始めて聞いた魔法である。
おそらく、やっと最近、使えるようになったので自慢したくて放ったのだろう。
そうだ。そうに違いない。
ここは深く考えないようにしよう。
眠りだ。眠り。
もう一度勝負。リベンジだ。
今度こそ、寝てみせる!
――いざ、勝負!
「――し。――れで!」
「――んなんものごときで――たしを殺せるとか――ちゃったわけ!? 」
「「――ッ! 」」
殺せる!?
なんか物騒な言葉が聞こえたような気もするが、大丈夫だろうか。
いや、そういう遊びなのだ。
大丈夫だ。きっと大丈夫だ。
それより、僕は眠りに集中。集中っと。
「――ゃあ、つぎはあた――ってことで。
「ーーぶない!
――ドーンッ!!!!!
眠れるかぁ!!!
……なんだこの揺れは。
地震が起きたのだと錯覚してしまいそうになるほどのこの揺れの正体はさっきのりえやエマの友達が放った魔法によるものだろうか。
さすがに、これ以上放置はできないな。
「――リエ、大丈夫ですか!? 」
僕が参戦したところで何一つとして変わらないのくらい分かっている。
だから、知っててあえて知らないふりをして自分を騙していた。
すべてを分かっているわけではない。
正直分からないことだらけだ。
「――イタタタた……。だ、大丈夫よ。――ってエマの方こそ傷だらけじゃない」
ここがどこなのか分からない。
僕が意識を失ったところには、鬼の軍勢の残骸が大量にあった。
そこからそんなには離れていない気もするが、目印となる残骸がどこにも見当たらないのでこの場所がどこかは分からない。
「――りえには防衛魔法をつけれたのですが、自分の分を忘れちゃってましてね……」
なぜ戦闘が起きているのかが分からない。
この少し遠くから聞こえる音からして戦闘が行われているのは明白だ。
しかし、なぜ戦闘が起きているのかは分からない。
「――やっぱり。過保護すぎ……って言いたいとこだけど、今回はなかったら危ないところだったし……今回はありがとう」
そして、誰と戦っているのかが分からない。
りえとエマの強さは異常だ。
鬼の軍勢やゴーレムやデュラハン、巨大な九尾の狐、そして見た目が気持ち悪い巨人。
そんな強敵を一瞬で残骸に変えるほどの実力があるのだ。
そんな二人が苦戦している。
――いや、窮地に陥っている。
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