第15話 ちゅ、中二病じゃないから!!!

「あやうくこの世界から僕という才能が失われるところだった。助力(じょりょく)、感謝する! 」


 我ながらとてもよくできた方だと思う。

 超絶ちょうぜつイケボボイスで超絶かっこいいセリフを言う僕。

 たまたまさっきの状況が悪かっただけで、実は完璧な最強主人公である僕にふさわしい。ちょっと中二病っぽくもなってしまったがそれはご愛敬(あいきょう)である。


「あんたねぇ。私たちは確かに中二だし、中二の病におかされちゃうのも仕方ないのかもしんないけど。あとちょっとで私たちも中三になるのよ。いい加減、そういうの卒業しなさいよ。あと、かっこつけるのはいいけど、せめて立ってからにしなさいよ。ものすごくダサいわよ」

「あ! 」


 今自分がどんな状態でいるのか完全に忘れていた。

 ゾンビに向かって行こうとしたところをこの子に救われて尻餅をついていたのだ。

 尻餅をついたままでは、どんなにイケボボイスだろうが、かっこいいセリフだろうが、かっこよさが半減してしまうという物だ。

 これはさすがに恥ずかしいな……。


「――い、一応言っとくけど僕、中二病じゃないからね。君までも勘違(かんちが)いしないでね……」


 ぼくはゆっくり立ち上がりながら、そう弁明した。

 しっかりとこれだけは伝えておかなければならないだろう。

 ここは異世界なのだから、さっきのレベルの中二病くらいなら違和感なく、なじめると思ったのだけど……。

 りえに中二病だと思われるのはしょうがないとしても、この少女にまでそう思われてしまっては、さすがの僕の心が折れてしまう。


「は? 何言ってんの。あんたガチの方の中二病じゃない? いい加減認めなさいよ。中二病も言ってみれば脳の病気みたいなものじゃない。病気にかかってることを人に隠す必要なんてないじゃない? 」

「チッチッチ。さっきは、たまたまかっこつけただけで中二病ではないんだな。実は! 」

「いい加減認めなさいよ。クラスの人も学校の人も言わなかっただけで、みんな気づいていたのよ。きっとこの子もきっと引いちゃってるんじゃない? 」

「え? そんなこと知らなかったんだけど! ……まぁ、それはいいとして、ねぇ? お願いだから正直に言って。君って、今引いちゃてる?」


 クラスの人や学校の人にそう思われてしまっていたという事実もとてつもなくつらいのだが、それは今の僕にとっては過去の話である。

 そんなことより、何よりも重要なのはこの子に引かれてしまっているかもしれないという可能性だ。

 この子はこの異世界で初めて会った人なのだ。こういう人は物語において重要人物となる確率が高い。

 アニヲタである僕には、それが痛いほど分かる。重要人物になるであろうこの子に中二病だと認識されてしまうのはいろいろと困る。

 そう思って尋ねたのだが……。


「うふふっ。ずいぶんと仲が良いんですね。仲良しな二人の姿を見ているだけで心がやされるのはどうしてなんでしょうか」


 少女はくすりと笑いながら笑顔でそう言った。さっきの会話を聞いていてなぜ僕とりえの仲がいいと思ったのだろうか。

 まぁいっか。引かれてなかっただけで十分である。むしろ以外と好印象のようなのでよかった。

 そして、だ。ちゃんと僕の話した言葉が相手に通じ、相手の話した言葉もしっかりと理解できているのだ。さすがは女神様の力といったところだろう。


「質問に答えたいのですが、チュウニ病? がどんな病気を指すのかが、イマイチよく分かんないのでその質問には答えられそうにもなさそうです」


 少女の見た目からも口調や言い回しまでも、どこかお嬢様じょうさまのような上品さが感じられる。

 これは本格的に貴族のお嬢様である可能性が高そうだな。

 それは一旦置いておくとして、なによりも中二病をあまり知らない様子なので一安心だ。


「その代わりといったら何ですが、私の屋敷についてきませんか? ずいぶんとゾンビに追われていたみたいですし、疲れたのではないですか? ここから歩いて行くなら、最寄りの町でも半日はかかると思いますし、日が暮れてたらまたさっきのゾンビみたいな魔物におそわれたりして危険です。ここであったのも何かの縁ってことで私の魔法で一緒に屋敷に行きませんか? 」

「「お願いします!!! 」」


 僕とりえは息ぴったりに、少し食い気味で答えた。

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