第9話支配人室②

戸惑う直人に頭を下げて「A国の諜報機関職員マイケル・アンダーソン」が、流暢な日本語で説明を始めた。

「まず、直人さまの、事件現場の動画をご覧いただきます」


ホテルマンにより50型ほどのモニターが運ばれて来た。

マイケル・アンダーソンがリモコンのスイッチを操作すると、新宿駅中央線の階段が映った。


「直人さまが、階段を降りて来ます」

「その後ろに黒いニット帽、黒いサングラスをかけた男」

「直人さまが、4段降りた時点で、黒いニット帽、黒いサングラスをかけた男が、直人さまの背中を強く押しています」

(ここで直人は、顔をしかめた、酷い頭痛を感じたので)


転げ落ちる直人の姿、床に転がり、血だらけで気を失う様子。

ただ、黒いニット帽、黒いサングラスの男は、首を横に振り、京王線方向(新宿西口)に逃げていく。

動画はそこで止まった。


内閣官房の小野田が深刻な顔で、直人に説明を始めた。

「直人君を襲ったのは、B国の諜報機関の人間」

「我々も、彼を尾行しておりました」

「難しい状況になったのは、直人君が、人違いで襲われたこと」

「そして、彼も、それを理解して逃げたこと」

「我々が保護したことも、おそらく把握するでしょう、彼の仲間も見張っていたはずだから」


直人は、ここで質問した。

「人違いであれば、実家に帰して欲しいのですが、何故、ここに?」


マイケル・アンダーソンが答えた。

「ご実家に戻れば、失敗の証拠隠滅のために、また襲われる可能性もあります」

「人間違いでも、襲ったなら殺すのが、B国の流儀なのです」

「また、その手口も残虐、確実に殺すために、爆弾の使用もためらいません」

「要するに直人さんを対象にしながら、無差別に関係ない人も殺される可能性が出て来ているのです」


内閣官房の小野田が、再び直人に頭を下げた。

「直人君のご家族、ご両親と妹さんは、政府で保護して、別の地域にあるホテル・アフロディーテで過ごしています、ご安心を」

「申し訳ないが、ご家族の仕事と学校は口外秘と、させてもらいます」


直人は、また首を傾げた。

「なぜ、ホテル・アフロディーテなのですか?確かに立派なホテルとは思いますが」


支配人藤田昇が、ゆったりとした顔で、近づいて来た。

今度は、ホテル・アフロディーテの説明になるらしい。

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