第19話心を病んだ少女 茜 ②

茜は、直人の胸で、ずっと泣いた。

何度か泣き止んだ。

しかし、また何かを思い出したのか、また泣いた。

直人は、茜の身体の揺れが激しいので、何度も抱き直した。

茜は、抱き直すと、また激しく泣いた。

泣き疲れたのか、直人の胸で、寝てしまった。


少しして、杉本瞳が入って来た。

「茜様のお部屋を、直人様の隣にします」

「ご心配は、不要です、茜様の了解済みです」


直人は、戸惑ったけれど、茜の「この状態」では、どうしようもなかった。


人の声で目覚めたのか、茜が目を開けた。

恥ずかしそうな顔だ。

「直人君の部屋見たいな」

直人は、また茜の背中を撫でた。

(今度は、茜が、ビクッと震えた)

「高校生男子の部屋で、面白いものはないよ」


茜は、ようやく笑った。

「アヤシイ本は?趣味を知りたいな」

直人は慌てた。

「あのさ・・・趣味って何の趣味?」

茜は直人をじっと見た。

「女泣かせの直人君の趣味」


直人は、困った。

何と返していいか、わからない。


南陽子が入って来た。

「夕食はどうなさいます?」

「レストランでも、ルームサービスでも」


直人は、茜に聞いた。

「何か食べたいものは?」


茜は、顏を曇らせた。

「今、食べるの苦手なの」

(それで痩せていると、直人は判断している)


直人は、思いついたことがあった。

杉本瞳に、「それ」を耳打ちした。

(杉本瞳は、目を丸くしている)

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