第33話サラは直人が愛おしくて仕方がない。

直人が目覚めたのは、午後7時少し前だった。

私、サラは、直人が可愛いので、また撫でた。(直人は、ビクッと震えた)

「直人。おなか減った?」


直人は、真っ赤な顔だ。

「サラ、服を着て」

「目のやり場がないよ」

(私としては、見せつけていたけれど)


ようやく服を着て、星空を見ながらの、夕食となった。


地中海風料理にした。

・サーディン(イワシ)のグリヤード。シンプルに塩焼き、レモン汁を振った。

・牛の赤ワイン煮。こってりと煮込んで、お米もつけた。

・ズッキーニ、トマト、赤や白のインゲン豆等の夏野菜をたっぷり使ったスープ。バジルソースを添えた。


一皿の量が多いので、料理はそれだけ。

ノンアルコールのスパークリングワイン(ロゼ風味)も飲む。


(少し心配だったから)

「直人、お口に合う?」


「うん、滋養強壮かなあ、身体に素直に入って行く」

(私は、ホッとした)

(放出させ過ぎで、ごめんなさい、と思っていたから)


「いろいろ、お話を聞いてくれてありがとう」(本音だ)


「ああ・・・いいよ、僕でよければ」

(直人だから、話したの、謙虚な子だ)


「これからも仲良くしてね」

(もう、一つになったけれど)


「はい、光栄です」

(また、欲しくなって来たよ)


食事の後、直人は、私のギターに注目した。

(部屋の片隅に置いてあった)

「サラはギターを弾くの?」


「弾くけれど、上手でない」

(事実、そうだから)


「僕が弾いてもいい?」


「うん、うれしい」

(拒む理由はない、弾いて欲しい)


直人は、最初から驚かせた。

ギター一本で、ラベルのボレロを弾き始めたのだから。

独特のリズム感、絡みつくような不思議なメロディが、満天の星空、静かな波音が聞こえる中、響き渡る。


「すごく上手」は、当然過ぎる。

それ以上に、心が浮き立つような、別世界に誘われる。

このボレロと言う曲は、激しいクライマックスで終わる、それも知っている。

でも、もっと、そこまでのプロセスを楽しみたい。

もっともっと、プロセスが続いて欲しい。

・・・とにかく、直人の音色は、美し過ぎる。

直人は賢くて、心も、身体も、音楽も素敵なの?

曲が進むにつれて、私の心は浮き立った。


私、サラは、もう直人が愛おしくて仕方がない。

直人に惚れてしまった。

だから、父が何と言おうと、直人は私の彼氏になって欲しい。


激しいクライマックスで、直人はボレロを弾き終えた。

「やり過ぎたかな」

(そんな恥じらい顏もいい感じ)


他の部屋でも、聞いていた人も多いようだ。

拍手も聞こえて来る。


ギターを置いた直人を、私は抱きしめた。

「すごく良かった」

「今夜は、泊って欲しいの」

「嫌と言っても返さないから」


そのまま、私の唇は、直人の唇を封じている。

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