第34話直人の困惑 

直人自身、困っていた。

サラと関係を持ってしまったことを、どう考えるべきなのだろうかと。

潔癖に拒むべきだった、そうすれば、全く問題がないとは思うけれど。


押し倒されて、肉欲に負けたのは、事実。

でも、サラが喜んでくれているのも、事実。


直人自身、サラに悪い感情はない。

悪い感情があれば、そもそも、若い身体であっても、「反応」はしない。

しかし、逢ったその日に、関係を持ってしまった。

いささか、節操がなさ過ぎると思う。


そうかといって、女性関係は、経験が少ない。

里奈と付き合っていた期間も、実は短い。

3か月ほどだ。

声を掛けて来たのは、里奈から。

「ずっと、入学した時から直人のことを想っていた、夜も眠れないほど」と言って来たから、付き合い始めた。

月に、2回から3回、放課後に、ファミレスや喫茶店に行く程度。

体の関係は皆無、手もつないだことはない。


直人は、要するに、あまりにも経験がなさ過ぎて、上手に女性の誘いを断れないのが事実。


結局、サラと一つのベッドで抱き合って眠った。

サラも、長い交情で、疲れていたので、朝まで目覚めなかった。


朝は、ベッドで自然に求め合った。

サラも直人も、理性ではなかった。

お互いの身体の反応のままに、快感を楽しんだ。


朝食は、シンプルな、サラダ、スクランブルエッグ、ベーコン、トマトスープ、バゲット、珈琲だった。


サラは上機嫌。

「身体が、直人を美味しいって、まだ喜んでいるよ」

直人もサラを褒めた。

「サラは、綺麗だよ」

「本当に女神様とか天使のように」

「僕も、すごく良かった」


食後は、それぞれのカリキュラムのために、別行動となった。

(サラは、名残惜しいのか、別れ際に、思いっきりハグとキスの嵐を、直人に浴びせた)


自分の部屋に戻る途中、杉本瞳から声がかけられた。

杉本瞳

「サラ様は、本当に喜んでおられました」

「ありがとうございました」

直人は、返事に困った。

「そう言われても」(実際は、求め合っただけと思うから)

南陽子は、満足そうな顔。

「直人様、上手になって来ました」

「安心ですね」


杉本瞳は、直人の考えの先を読んでいた。

「茜様は、健康です」

「かなり、明るくなりました」

「直人様に、身体を見せたいので、しっかり完食しています」

南陽子が、補足した。

「もし、健康になったら、抱いてあげてください」

「それが、茜様の生きる希望です」


直人は、そこで疑問を感じた。

「性倫理とか、ここにはないの?」

「それと、僕にも感情があるよ」

「誰でも抱く、そういう人間ではないよ」


直人の部屋に、3人で入った。

杉本瞳が、頭を下げた。

「申し訳ありません、直人様」

「女性を抱く、抱かないは、直人様のご判断です」

「ただ、女性から求められた場合は、なるべく応じてあげて欲しいのです」


南陽子も頭を下げた。

「直人様には、カリキュラムで、いろんな女性に、お逢いしていただきます」

「直人様と、その女性と、どうなるかは、直人様の責任ではありませんが、おそらく求められるケースが、ほとんどかと」

「捨てられた女性の苦しみを、救ってあげて欲しいのです」


直人は、困惑しながら、話を聞いていた。

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