第27話苦悩のサラ①

歴史の講義兼試験は、午前11時半で終わった。

3人の外国人子女のうち、キャサリンとジュリアンは、「別のカリキュラムがある」「教室も遠い」との理由で、部屋からいなくなった。


残ったのは、サラ。

午後1時半からのカリキュラムが同じ。

「英語」だったから(何故、外国人子女のサラが英語を勉強するのかは不明だった)


サラを改めて見ると、目鼻立ちがくっきりとした超美少女。

花柄のシャツに、ゆったりとしたブルージーンズと紺のスニーカーの軽装。


そのサラが話しかけて来た。

「直人、お昼一緒しようよ」

直人は、拒む理由がない。

難しいのは、レストランが多くある中、何を選べばいいのか、ということ。


だから聞いてみた。

「僕が選ぶ?それともサラが?」

(まだ、ホテル・アフロディーテに不慣れなので、自信もない)


サラは、満面の笑顔。(美少女が笑うので、実に輝いて見えた)

「お寿司、回転寿司に行きたいの」

直人は、窓から見える海を見た。

「確かに、ここ、海が近いから、お寿司は美味しいはず」


教室を出ると、杉本瞳と南陽子、そして、おそらくサラのメイドの中年女性が1人立っていた。(ドミニクです、と流暢な日本語で自己紹介して来た)


杉本瞳が「回転寿司店を手配いたしました」と言って来たので、その案内のもとに1階の回転寿司店に入った。


向か合わせに座って、直人は話しかけた。

(すごくドキドキしたけれど)

「お茶は、緑茶でいいかな?玄米茶もある」

サラは、笑った。

「最初に緑茶、最後に玄米茶、両方楽しめる」

(直人は、すぐに緑茶を入れて、サラの前に置く)


寿司の注文は、直人がリードした。

「サラ、あのね、お寿司は選び方があってね、というか注文の順番があるよ」

サラは目を丸くした。

「え・・・トロとか、美味しいものからでは?」


直人は、少し笑って「カッパ巻き:キュウリの巻き寿司」を選んだ。

「日本料理は、味が薄くて、アブラが濃くないものから選ぶのが基本」

「逆にはできない、美味しくない」


サラの理解は速かった。

「あ・・・知らなかった」

「そうだよね、アブラが旨味を消すのか」


出て来るのも、速かった。

かなり新鮮なキュウリ、寿司米も文句なしに美味しい、海苔もしっかりとしたもの。

直人は思った。

「口の中がさっぱりする、これも海苔があるから山の幸、海の幸かな」

「この寿司屋のレベルも高い」


その後は、イカ、タコのような薄味ネタから、次第にマグロ、サーモン系に進んだ。

サラは、よく食べる。(繊細な味覚もあるようだ)

「確かに、直人の言う通り、このほうが美味しい」


直人は、サラの理解力がうれしい。

「どうしても守らなければならないルールではないよ」

「でも、このほうが美味しいから、そうしているだけ」

最後は、穴子にした。

ふんわりとした穴子の身、甘めのタレが、実に美味しい。

(直人は、退院して、本当に良かったと思う)

玄米茶(サラの希望通り)を飲んで、回転寿司店を出た。


サラから、話しかけられた。

(寿司の時は、食べるのに夢中で、あまり話さなかった)

「ねえ、直人、講義の後、予定ある?」


直人はカリキュラム表を見て答えた。

「無いよ、何していいのかも、わからない」

「まだ、ここ慣れていないから、散歩、探検かな」


サラは、いきなり直人の腕を組んだ。

「一緒にお散歩して、私の部屋に」

「直人、話しやすいから、お話したい」


直人は、「いいよ、お邪魔する」と、OKした、

(杉本瞳、南陽子、ドミニクも頷いているので)


サラは、相当うれしかったらしい。

直人は、いきなり強いハグをされている。

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