第8話支配人室①

直人は、杉本瞳と南陽子に伴われて、豪華な(あてがわれた)部屋を出た。

見ると、すごく上質なホテルの廊下が、一直線につながっていた。

部屋も多く、何部屋あるのか、まったくわからないほどだ。


歩きながら、杉本瞳から、また話があった。

「支配人室でのお話の後、驚くことがもう一つありますので、ご覚悟ください」


直人は、聞き返した。

「覚悟を決めるほどの、驚く話って何ですか?」


南陽子が、意味深な笑みを浮かべた。

「はい、ご心配なく、対応させていただきます」


直人が首を傾げていると、杉本瞳も笑った。

(直人は、その笑顔に、身体が少しザワザワとする感覚)

(しかし、今は支配人との面会を優先させたい、再び聞き返すことはしなかった)


支配人室は、最上階にあるとのことで、エレベーターに乗った。

その最上階でエレベーターを降り、少し歩くと、確かに、支配人室の看板が見えた。


杉本瞳から笑顔で「こちらになります」と声をかけられ、南陽子がドアを開け、直人は支配人室に入った。


「ようこそ、直人様」

「お待ちしておりました」

落ち着いた大人の男性から声がかかった。

「私が支配人の藤田晃でございます」


直人が、「井上直人です」と、静かに名乗ると大きな黒革のソファに誘われた。

かなり上質なソファで、身体全体が包み込まれるような安心感。

また、支配人室は、かなり広くて豪華な応接室。

奥に事務室もあるようで、10人程度見えたけれど、直人は、聞ける状態ではない。


不思議なのは、「支配人藤田晃」の他に、二人の壮年の男性が目の前に座っていること。

一人は日本人で、もう一人は欧米系の顔立ち。

共通するのは、二人ともかなり精悍な感じということである。


直人が戸惑っていると、一人ずつ、自己紹介をして来た。

まず、日本人から

「内閣官房の、小野田道義と申します」

「事情の説明を行います」

「それから、この外国人は、マイケル・アンダーソン」

「A国の、諜報機関の職員です」


直人は、あまりのことに、頭がクラクラとなっている。

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