第86話ヴァロワ家のカトリーヌ⑤

私、ヴァロワ家のカトリーヌは、ますます直人に惹きつけられていくことを自覚しているし、楽しんでいる。

(ものの考え方、学識、謙虚さ、気づかい)

(もちろん、美しい容姿も、ベッドも大好きだ)


食事の後、いろんな話(真面目な話が多かったが、それはそれで楽しかった)をして、ようやく落ちついた。

直人を、ゆっくりと愛した。

(もちろん、直人にも可愛がってもらった)


「直人、私、今、すごく幸せで充実しているの」


「うん、それはよかった」(少し素っ気ないよ・・・その返し)


「直人とお話が出来て、一緒に仕事が出来て」


「ああ、動いたほうが気持ちがいい、じっとして奉仕されるのは飽きた」

(現実的だなあ・・・)


「それで・・・直人を抱けるのが一番かな」

(そのまま、また抱いた)

直人から、言葉はなかった。

私が眠るまで、ずっと撫でてくれていた。



いつの間にか、朝になっていた。

(直人の愛撫が気持ち良くて、そのまま眠ってしまったのだ)


私は、不安を覚えた。

抱いてくれていたはずの直人が、ベッドにいないのだ。


「帰っちゃったの?それとも他の女に?」(叫んでしまった)

涙も出て来た。


すぐに、直人の声が聞こえた。

「カトリーヌ?」


「直人?」

私は、直人の声がした方向に顏を向けた。


「お茶が飲みたくてね」

「レディグレイを淹れた」

「一緒に飲もう」

直人は、白いバスローブ姿。(朝の光を帯びて。まぶしい)


「うん」(涙が、恥ずかしいよ、子供みたいだ)


もっと恥ずかしいこともあった。

「カトリーヌ、ちょっといいかな」

直人は、湿らせたタオルで私の口の周りを拭いてくれたのだ。

(おそらくヨダレの跡)


「カトリーヌ、本当によく眠っていて、可愛かった」

(確かに、ヨダレを出したから・・・見られたのは悔しい)(知性派の私なのに)


「レディグレイ美味しい」(私は、懸命に話題を変えた)


「ありがとう・・・実はこの中に、少し工夫した」(直人の目がキラキラしている)


「何したの?」(すごく興味がある)


「紀州みかん、青島みかんの、皮チップを入れた」(え?ぜいたく?)


「とにかく、すごく鮮烈で甘い風味」(お蔭様で目が覚めました)


「地産地消とも言う、近所の、あそこに見えるミカン山の青島だから」

「ゼイタクではないよ、捨てている皮だから、何もお金はかからない」


直人が、そんなマウントを取ろうとするから、私は、気に入らない。

「ねえ、直人」

「また欲しくなった」


「え?」(直人は、後ずさりした)


でも、許さなかった。

本気で直人を襲った。

(直人と女子とは順番、直人が部屋を出て行けば、当分、出来なくなる)

(その寂しさもあった)


直人を押さえつけて、何度も、愛した。

直人の胸と肩は、また血まみれになってしまった。

(悪女かもしれない・・・ごめんなさい)

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