第85話ヴァロワ家のカトリーヌ④

私、ヴァロワ家のカトリーヌは、しばらく直人の指に、胸を委ねた。

(とにかく、快感)(直人の真面目な顔も、面白かった)

「直人、胸フェチなの?」


「いや・・・カトリーヌの胸、いい感じ、芸術だなあと」


「ありがとう」(顏が真っ赤になるのを自覚した)


そんなホワホワタイムを終え、フィレンツェスタイルの食事を夕闇の中、広いベランダで。


自慢のビステッカ・フィオレンティーナ(特大ステーキ)

トリッパのトマト煮込み(ハチノスをトマトソースでじっくりと煮込んだもの)

クロスティーニ(トーストしたパンの上にレバーペーストをたっぷりと乗せたもの)

シーザーサラダ、赤白のトスカーナ産ワイン。(実は15歳から飲んでいる)


直人はワインを飲んでも、顔色が変わらない。

「日本では未成年の場合、お酒は違法だよ」(何を今さら感、もある)


言い返した。

「アフロディーテは、日本にあるけれど、日本でないよ」

「日本の司法は入れないの」

「アフロディーテの自治に任されているの」


直人は、苦笑い。

「現実世界でない、異世界かもね」

「入ったら戻れない竜宮城みたい」


少し不安になった。

「直人、まだ辛いの?」


直人は、ステーキを飲み込むのに苦労している。(とにかく、大きな肉だから)

飲み込んで(それも無理やり・・・真面目だなあ)直人は答えた。

「出られないなら、出られるまで、ここの生活をしっかりするだけ」

「楽しいよ、考え方次第かも」


「うん、よかった」

「しっかり食べてね、フィレンツェの味」


直人は、笑った。(しっかり食べ始めた)」

「味付けが濃いけど、後を引く」

「香辛料も、適度でいいね」


私は話題を変えた。

「多国籍喫茶は拡大するの?」


直人は、少し首を傾げた。

「満員なのは、ありがたい」

「でも、規模を拡大して、味が保持できるのか、それが不安」


「確かにそうね、喫茶は味が第一」


直人は、紫色に変わった空を見た。

「働きたい人の研修もしないとなあ」

「レベルに達するまで、どうしても一か月はかかるよ」

「あまり、アメリカみたいにマニュアル化するのも、どうかと思うけれど」

「決められた時間だけ蒸らしで出せばいい、それだけでないよ」

「お茶とか、珈琲を愛する人に、仕事をして欲しい」


「また、みんなで検討しない?」(私はまた、別の話題に変えたくなった)


「うん、僕たちだけの、店でもない」(直人は素直だ)


「ねえ、直人はシェークスピアは読むの?」(話題変え過ぎかな・・・)


直人は、にっこりと笑った。(ホッとした)

「ヴァロワ家としては、フランス国王家としては・・・気に入らないよね」

「イギリスびいきに書かれ過ぎて・・・時折の名句は否定できないけれど」

「もともとは、イギリス人のための商業戯曲文学だからね」


「そうなの・・・だって、イギリス王なんて、フランス国王の辺境伯に過ぎないのに、フランス国王とフランスをコケして、気に入らないの」


その後、約30分、シェークスピア談義が続くことになった。

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