第61話「日本政府とホテル・アフロディーテからの提案」

「沢田副支配人」からの「日本政府とホテル・アフロディーテの提案、お願い」は、直人にとって、現状分析を含めて驚くべきものだった。

要約すれば、以下の通り。


まず、現状分析として

・B国の諜報機関によるテロは、世界中に件数、規模が拡大傾向にあること。

・B国自体が、国際テロを予告し、実施。

その後、更なるテロ実施すると脅して、該当国政府から資金を「せしめる」国になっていること。(もちろん、各国政府の裏金からである)

・誘拐、殺人(誘拐もテロに入る)に失敗した場合、何度でも、何年でも(あるいは何十年でも)死ぬまで、暗殺テロ対象になり続ける。(事実、30年後、40年後の暗殺実施も報告、声明発表されている)

・それらを勘案した場合、日本政府及び西側諸国の合意として、直人をホテル・アフロディーテから外に出すことは難しい。(もちろん、直人の家族も)

・理奈と良樹の惨劇も、実はB国諜報機関の仕掛けだった。(直人をホテル・アフロディーテから外に出すための仕掛け)(最近、理奈の浮気相手のホストが白状した)


うなだれる直人の肩を、沢田副支配人がそっと抱いた。

「ごめんね、ここにいて」

「納得できないだろうけれど」


直人は、顏をおおった。

「嫌だよ、そんなの」

「理屈では、わかる」

「でもさ、せめて家族に逢いたいよ」

「家に帰りたいよ」


沢田副支配人は、直人の背中を撫でた。

「ここにいる人は、みんな、そんな人ばかり」

「直人より、もっと遠い国からの人も」

「じっと耐えている」


直人は、沢田副支配人の顏を見た。

「それで、お願いとか、何とかは?」


沢田副支配人の言葉は強め。

「教育カリキュラムを強化します」

「語学、歴史、地政学、国際政治、軍事、安全管理」

「留めおいて申し訳ないけれど」

「そのカリキュラムをクリアしながら」

「いろんな女性の心と身体に癒しを与えてもらいます」


直人は、沢田副支配人を手で制した。

「カリキュラムは理解できます」

「でも、いろんな女性と何とかは」

「今でも、そうなっているような」


沢田副支配人は、直人の頭を軽く撫でた。

「今まで、直人君と関係を持った人たちを、考えて欲しいの」

「茜さんは別として・・・心だけ癒したか・・・身体はまだまだ」

「サラ、香麗、涼子さん、そしてマリア」

「いずれも、かなり力を持つ御一族の娘さん」

「彼女たちは、直人君を高く評価しています」

「ずっと一緒にいたいとも」


直人が、首をかしげていると(話の先が見えないので)、沢田副支配人が、クスッと笑った。

「ゆくゆくは、ここのスタッフになって欲しいの」

「そういう人たちのお相手を当面は務めて、世界中に直人君のファンを作っておくのも得策だから」

「要するに、スタッフとして、スカウトしたいの」

「将来的には支配人を目指して」

「当初の報酬は、普通の大卒初任給より数倍多いかな」

「現状で、ドル支払いになるけれど」


直人は、怪訝な顔。

「マジですか?」

「当面は、ホストみたいなもの?」


沢田副支配人は、プッと吹いた。

「まあ、それは直人君が、女性の話を聴く才能とか、お相手の才能があって」

「ベッドも上手になって来ているからね」


直人は、横を向いた。

「この前は、我慢が足りないって」(沢田副支配人との時は、何度も暴発した)


沢田副支配人は、直人の耳に息を吹きかけた。(直人のスキを突いた)

衝撃で崩れていく直人に、もう一言あった。

「ホテルの運営管理も、やがては、手伝ってもらいますよ」


沢田副支配人は、直人の手をしっかり握っている。

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