第72話直人の構想
美しい夜明けだった。
うっすらと、明るくなっていく大空。
肌にあたる、湿り気を含んだ海からの、柔らかな風。
可愛らしい小鳥の声。
静かに繰り返す波の音。
遠くに見える釣り舟。
振り返れば、何も身に着けていない女性が4人。
思い出せば、狂ったように求められ、応じた。
それ以外に、何もない。
罪悪感は薄い。
なにしろ、多勢に無勢。
逃げることは、考えも出来ない状況だった。
最後は、貧血なのか、気を失うように、眠りに入った。
直人は、頭を振って、眠気を払った。
空腹感は強い。
ただ、その前に服を着たいと思う。
普通の感性に戻りたいのだ。
人は服を着る生き物だから。
気付かれないように服を着た。
アールグレイのリーフ茶があったので、淹れてベランダで飲む。
少し酸味があって、いい感じのお茶。
乾ききった身体を、少しずつ潤していく。
少しして、エリザベスが起きて、直人の前に来た。
全裸だったので、バスローブをかぶせた。
アールグレイを、無言で、エリザベスにも注いだ。
エリザベスは、目を閉じて、飲んだ。
「美味しい・・・直人が?」
直人は、少し笑った。
「みんな、寝ているよ」
エリザベスも笑った。
「すごく楽しかった、燃えた感じ」
直人は、「その話題」には付き合わない。
「後で、お茶屋さんと珈琲屋さんに行く」
「器具も揃えたい」
エリザベスは、直人の手を握った。
「一緒に行きたい」
直人は、考えていることを話した。
「いろんな種類を揃えて、自分で淹れて飲みたい」
「飲ませてもらう、飲まされるのは、飽きた」
エリザベスも、頷いた。
「それは、面白いなあ」
「毎日変えて、淹れて飲む」
直人
「実家では、紅茶だけでも、20種類はあった」
「フレーバーティーまで入れると、30は越える」
エリザベスは、直人と腕を組んでしまった。
「毎日通うかな、直人の部屋に」
直人は、笑った。
「手伝ってくれるの?」
「それを発展させるような、少し考えていることもある」
「多国籍茶店、メイドだけでなくて、滞在者もお客に淹れて出せるような」
エリザベスは興味津々。
「ほお・・・私も出来るかな」
「ニューヨーク風とか」
「エヴァはスウェーデンとか北欧風のメニュー」
直人
「その実現のために、まず練習とか、飲むとか」
そんな話をしていると、エヴァ、杉本瞳、南陽子が歩いて来た。
(全員、バスローブを着ていた)(直人は一安心だった)
直人とエリザベスから、「多国籍茶店の話」を聴き、全員が笑顔。
杉本瞳
「支配人に連絡しておきます」
エヴァ
「私も、本格的にケーキを焼く練習しますよ」
南陽子も積極的。
「和風の茶室も考えましょう」
前夜、身体を求め合った5人は、和気あいあいと茶店話で盛り上がっている。
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