第69話エヴァも直人に落ちた。

私はエヴァ。

エリザベス様のメイドを長年つとめて来て、常に冷静な言動、時には誰に対しても強く対応して来た。

(すべては、エリザベス様の名誉と安全、ご一族の名誉と安全のため)


また、それを徹底するために、常に自分自身の感情を抑え(時には殺し)、一点のスキもないようにして来た自負がある。

しかし、今、目の前にいる「日本の平民の子供」で「私から見ればキッズのような」直人に、完全にマウントを取られてしまっている。


まず、エリザベス様が当初は(本当は今でも)直人に意外な興味を覚えてしまった。

仕方なく、エリザベス様のお部屋に誘導して、「天と地ほどの身分の違いをわきまえなさい」の意味で、厳しく直人に接した。

「普通の」常識ある欧米系の男子は、(我等超巨大軍事企業の威光にひれふし)そこで、かしこまる、いや、かしこまらなくてはならないけれど、直人は違った。


あろうことか、あっさりと背を向けて帰ってしまったのだ。

(あまりにも想定外だったので、ドアのロックも開けたままにしてしまった)


とんでもない失態にオロオロする私に、珍しくエリザベス様が怒った。

「私が、直人君と仲良くなりたいの」

「身分なんて、どうでもいいの」

「それ以上の魅力が、彼にはあるのに」

「あんな言い方はないよ」

「かなり傷ついたかも」

「下手をすれば、ここのアフロディーテから追放されるよ」


私は、急いで直人様のメイドに「謝罪」のメッセージを送った。

少し間があって「直人様のお部屋にお越し願います」の返信だった。

(一安心だった)

(でも、対面での謝罪は慣れていない、しっかりできるかどうか、また不安になった)


直人様の部屋に入ってからの流れは、ご承知の通り、私もエリザベス様も、完全に直人様にマウントを取られている。

謝罪は、あっさりと受け入れられた。(肩の力が抜けるほどの、やわらかな笑顔で)

「まずはお茶を」が、効いた。

(とにかく、落ち着いての意味と思った)

(慣れない謝罪での緊張を見透かされていた)


「マルコ・ポーロ」のお茶は、「魅惑」そのものの香りと味。

これも、私の心を揺らした。

そして、スウェーデンのケーキの話題は、私の凝り固まった心を完全にほぐした。(母の顏や、子供時代の幸せな家庭を思い出した)


直人様は、そんなトロトロになった私を、さらに「攻略」して来た。

あっさりと手を握られ、マッサージだ。

(格闘技もかなり練習しているが、直人様の手はかわせなかった)


・・・最初から、気持ちがよかった。

直人様の指に、私の身体のいろんな部分が連動して、緩んで行く。

時々、痛いと思うけれど、すぐに気持ちがよくなる。

身体の中から、温まる感覚だ。

ただ、少しずつ、アブナイ感覚になった。

とにかく、身体の中心の敏感な部分が、反応し始めたのだ。


直人様は、不敵な笑みだ。

「性感のツボ」と言った。

私は、焦った。(このまま、揉まれると、ほぼアウトだと思った)

でも、良過ぎて、止めて欲しくないのが、身体の本音。


しばらく、トロトロしていたら、直人様の指が止まった。

手も離されてしまった。


直人様は、さわやかな笑顔だ。

「食事の時間らしい」

「エヴァさん、少しは楽になった?」


「はい・・・」としか答えられない。

(・・・完全に、生殺し状態だ)

(もう、立つのも辛いのに)


エリザベス様が私の肩をポンと叩いた。

「ベッドで続きを」

「エヴァも参加する?」


直人様の腰が引けた。

(それは許さないと思った)

(とにかく、今度は逃がさない)


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