第6話直人の耳に、波の音が聞こえて来た。

直人の耳に、波の音が聞こえて来た。

何故、波の音が聞こるのか、最初はわからなかった。


目をパチパチさせながら開けた。

まず、天井から、かなり豪華な、広い部屋とはわかる。

背に感じるのは、ベッド、しかもかなり楽な、ダブルベッド。


寝返りを打とうとした時だった。

杉本瞳の声、そして姿が見えた。

「お目覚めのようで、直人さま」


後ろから、南陽子の声もした。

「ヘリコプターでお眠りでしたので、お運びいたしました」


直人は、部屋を見回しながら、ベッドに腰掛けた。

部屋は、やはり豪華で広い、ソファセットや調度品が、かなり立派なもの。

白い壁には、風景画や静物画、いろんな絵が掛けられている。


また、甘い香水の香りが、ほのかに漂っている。

正面に大きな窓。

窓の向こうに、紀州の海だろうか、大きな青い海が広がっている。


杉本瞳から、また声がかかった。

「窓の隣にベランダに出るドアがございます」

「ベランダには、露天風呂がありますので、いかがでしょうか」


直人は、この「露天風呂」に即座に反応した。

「え・・・入っていいの?」

思えば、聖アフロディーテ病院では、入院以来、沢田看護師の「清拭」を受け続けて来た。

恥ずかしくて、また「危ない」思いもしたことを思い出す。

けれど、今は、とにかく湯船につかりたかった。


南陽子が、窓の隣のドアを開けた。

「お風呂の後、支配人から、詳しい経過説明がございます」

「それまでに、お風呂を済ませましょう」


直人は、うれしくて、ベッドを飛び降りた。

そして、ベランダの入口まで小走り。

ただ、そこで止まった。

「脱衣場とかバスタオルとか、着替えは?」


杉本瞳は、花のような笑顔を見せた。

「全て、準備は整っております」


南陽子が顔を赤らめて、悟の服(まだ聖アフロディーテ病院の入院服だった)に手をかけた。


ほんの一瞬だった。


直人は、生まれたままの姿に、させられてしまった。

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