第21話心を病んだ少女 茜 ④

しばらくして、直人の部屋にノック音。

南陽子が菓子盆を持って入って来た。

直人は、抱いていた茜の背中をトントンと叩く。

「お菓子食べたい、おなか減った」


泣き止んでいた茜は、ようやく直人の胸から、顏を離した。

直人はテーブルの上の菓子盆から、一つ丸めた菓子を取って、茜の口の前に。


「食べて」


茜は、素直に口を開けた。

(南陽子は、その素直さに目を見張っている)


そして、笑った。

「あ・・・これ・・・」

(すごく可愛らしい笑顔になった)


直人は、また茜の背中を撫でた。

「きな粉のお餅だよ、昔食べたよね」


茜は、今度は自分で、きなこ餅を取って食べた。

「メチャ美味しい、何個でも食べられる」


直人も、食べた。

「確かに美味しいよ、きな粉って、もっと評価されてもいいかも」


杉本瞳が、冷たい麦茶をテーブルに置いた。

茜は自然に笑った。

「きな粉ってむせるから」


直人は、茜の笑顔が可愛い。

「茜ちゃん、美人だよ、その顔好き」


茜は、赤い顔になった。

「その気になるよ・・・」

「直ちゃんなら」


直人は、話題を変えた。

「ねえ、茜ちゃん、夕飯も一緒にしない?」

「ここ慣れていなくて、教えて欲しい」


茜は、またうれしそうな顔になった。

「そうね、何食べたいの?」


直人は、茜の痩せた身体を見た。

そして聞いた。

「ここのホテルにファミレスってあるの?」

「学生スペシャルとかあるのかな」


茜の目がパッと輝いた。

「うん、案内する!」

「直ちゃん!行こう!」


そのまま直人の手を握り、元気よく歩き出した。

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