第8話
それからの時間は、何をしていても集中できない状況が続いてしまいます。
島崎剛徳=コルネーユ・ノバック。確定しているわけではありませんが、疑うこともありません。
――しかも、お父様の会社と関係してるなんて……。ご本人は前世のことを覚えていたんでしょうか?
考えてみても答えの出ないことだと分かっていました。彩音が思い出せている記憶のほとんどが処刑台の上の光景でしかありません。
――悩んでも仕方ありませんわ。悠花さんと澪さんと約束をしているんですから、その時に少しは分かるかもしれません。
学校の中では込み入った話をすることも出来なかったので、学校が終わるまで待つしかありませんでした。悠花や澪も同じように少しだけ落ち着きなくソワソワした様子が伝わってきます。
なんとか学校での時間を過ごすこともできて、帰宅後に彩音の元へ集合となりました。これで『緊急会議』を開催するだけとなったので気持ちは少しだけ落ち着けます。
「……ごめんなさいね、呼び出すようなことになってしまって。」
着替えだけを済ませて来てくれた二人にお礼を述べて、彩音は私室に招き入れました。使用人も席を外してもらい、他の人に話を聞かれないよう三人だけの空間を作り出します。
「いいえ、一刻も早くお話しをしたかったので、お気になさらないでください。」
「私もですは、今日はずっと落ち着かなかったんです。」
悠花と澪が少しだけ興奮気味に話し始めます。本当に落ち着かない一日になってしまっていたのだと思います。
「……それで、お二人は何かお気づきになることはあったんですか?」
悠花と澪は顔を見合わせていましたが、首を振ってしまいます。
「私の父も昨日出かけていおりまして、父が置いたままにしていた新聞を見つけてしまったんです。……その記事を見た瞬間、パッと『コルネーユ』さんのお名前が頭に浮かんだんです。」
悠花の父の経営する会社も、彩音の父・浩太郎の会社との関りがあり島崎とは繋がっています。これは澪にも同じことが当て嵌まり間接的にではあっても関りがあったことになります。
「……それから、一生懸命に思い出そうとしたんですが、ソフィア様のお誕生日に事件を起こした人という情報しか思い出せませんでした。」
悠花としても、新聞の写真を見てからは不安だったのかもしれません。
「私も、今朝、悠花さんに新聞を見せてもらってから思い出す努力をしていたんです。」
澪は、思い出せたことを整理しながら語り始めます。
「コルネーユさんは領主さんで、領民が貧しい生活を送っていても、自分だけは贅沢な暮らしをしていたらしいのです。そのことを起こった領民がコルネーユさんを襲って、コルネーユさんを追放してしまった……んだと思います。」
澪の話を聞いていた悠花が、
「……それって、こちらの世界で島崎さんが従業員の方にケガをさせられた事件と同じになるんではないのですか?」
「はい。……もしかすると、前世で起こったことが繰り返されているんではないかと考えてしまって……。」
そこから先は、彩音にも想像ができていました。
前世の記憶を三人が揃って取り戻したこと、その記憶をなぞるように事件が起こったこと。
このままでは、前世の結末と同じことが起こってしまうのではないかと不安になってしまうのは当然かもしれません。
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